AI時代のパブリッシャー戦略 PVモデルから「HEROモデル」へ Publidia #237
12月26日にイベント登壇します。リアルとオンラインハイブリット開催です。
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最新回#44は以下になります。
# 🚩 トップニュース
米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの売却手続きで、Netflixが現金中心の提案を示し、競合のパラマウントやコムキャストを退けて買収を決定した。
買収額は720億ドル(約11兆円)で、映画スタジオやHBO、HBO Maxなど主要事業が対象。豊富な作品群がNetflixに加わり、配信ラインアップ強化や制作体制拡大が期待される。
一方で、買収後の市場支配力への懸念から米政権が調査や介入に動く可能性も指摘されている(Bloomberg)(日本経済新聞)
産経新聞社のネット媒体「エモグラム」で、他社記事をコピーし語尾を改変するなどした盗用が5件発覚した。11月17〜25日に掲載された記事で、同一の派遣スタッフが執筆。チェックを担当した委託編集者も気付けず、社員不在の出稿体制にも問題があったという。
産経は記事削除と謝罪を行い、再発防止として編集チェック強化や教育の徹底を進めるとしている。(emogram[エモグラム])
# 📍 ピックアップ
今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。
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AI時代のパブリッシャー戦略 PVモデルから「HEROモデル」へ
AI時代のパブリッシャー戦略 PVモデルから「HEROモデル」へ
メディア戦略の専門家であり Audiencers のエディターとしても知られる Madeleine White 氏が提示した「HEROフレームワーク」を紹介する。
White 氏は読者行動分析、サブスクリプション戦略、メディア成長モデルの設計に長年携わり、多くの欧州メディアのデジタル転換を後押ししてきた人物として評価されている。
PVモデルの限界
パブリッシャーの従来の成功指標は、記事の公開、PVの拡大、読者数の増加といった“量の指標”に偏っていた。しかし、AIが記事生成や拡散を容易にする現在、そのアプローチだけでは差別化が困難になっている。
White 氏は「AIに勝つ唯一の方法は、人間的な関係性の構築である」と指摘する。
従来マーケティングの「認知 → 獲得 → 変換 → 継続」のファネルモデルは、大量の“価値の低い読者”を集める一方、長期的価値に結びつく読者を十分に育成できない点が課題とされる。
White 氏は「まず最重要読者(高エンゲージメント・高継続層)を定義し、その特性から逆算して獲得戦略を設計する“逆転ファネル”」 を提唱する。
ベルギーの Le Soir や英国 Daily Mail はすでにこの手法を導入し、理想的読者像をデータで把握した上で、商品設計・オンボーディング・編集方針にまで反映している。
中間層を育てる「HERO」モデル
White 氏が特に強調するのが、単なる一見の訪問者を“関係資産”へと育てるための HERO(Habits / Engagement / Relationships / Ownership) である。
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Habits(習慣):定期的な訪問やアプリ利用を促す
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Engagement(関与):滞在時間や読了率ではなく“質の高い利用体験”を重視
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Relationships(関係):コミュニティ、対話、参加型コンテンツで帰属意識を形成
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Ownership(所有):第三者プラットフォーム依存を減らし、読者データを自社で保持
この“HERO中間層”を強化することで、サブスク継続率、紹介行動、コミュニティ参加など、ビジネス価値の高い行動が生まれる。
成果を測るのは「Belonging(帰属)」の指標
White 氏は従来の“リーチ”や“エンゲージメント”に代わる最重要指標として Belonging(帰属・愛着) を挙げる。
これは単なるアクセスではなく、頻繁な再訪、長期継続、コミュニティ参加、紹介行動といった“関係の深さ”を測る概念で、
Financial Times などはすでに評価軸を読者生涯価値(LTV)へ移行している。
HEROモデルでは具体的にどういった数値を見ればよいのか?
こういったフレームワークについて、どのような数値をモニタリングしていけば良いか。
例えば、Habits(習慣)ではユーザーあたりの訪問頻度や週次、月次のリピートユーザー率、日次/週次のアクティブユーザー、通知クリックなどが考えられる。
これらの数値を見ることでどの程度のユーザがサイト訪問を習慣としているか把握ができる。
Engagement(関与)ではエンゲージメント率、平均エンゲージメント時間なども考えられるが、それ以外にも設定が必要だがスクロール深度、コンテンツの読了率、関連記事クリック数、コンバージョン行動などが考えられる。
これにより、1PVという質が見えない状況から改善される。
しかし、勘違いしてはよくないのがエンゲージメント時間が長い=良いというわけではない。読了率や関連記事クリック数など多面的に評価する必要はある。
Relationships(関係)はログイン理、コメントやリアクション数や会員限定記事の読了率などサイトのコミュニティや双方向性がある機能への接触などを見ていく必要がある。
Ownership(所有)は、プラットフォーム依存ではない流入を見ていけば良いと考えられる。
Direct流入比率(当然Google Discoverを除いた)やメール経由のセッション数など。
一部、こうした数値でサイトの評価をしている人もいると思うが、一度向き合って整理してみるのはお勧めしたい。
# 🗾 国内ニュース
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# 編集後記
ここ最近、検索からサイトの訪問数が減少しているという話が盛り上がっています。
現実的な解釈としては、松浦シゲキさんのそれでもメディアは面白いと、将来的な話としてOff Topicの直近2回が関連する話として面白かったです。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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