知的財産としてのジャーナリズム Publidia #213
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最新回#37は以下になります。
📢 イベント登壇(6/28)のお知らせ
昨年末にも登壇したHON.jpさんのイベントに登壇します。
マンガ業界Newsまとめの菊池さん、出版業界ニュースまとめの古幡さん、北米エンタメニュースまとめのlibroさんと西田宗千佳さん、HON.jpの鷹野さんとご一緒するイベントです。
前半は無料となっています。
# 📍 ピックアップ
今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。
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電通とドコモ、CARTAを合弁化──広告×通信の産業再編が加速か
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“記者もオフィスも存在せず?” AI活用のニュースサイトに偽装疑惑
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知的財産としてのジャーナリズム
電通とドコモ、CARTAを合弁化──広告×通信の産業再編が加速か
2025年6月、電通グループ傘下のデジタル広告会社CARTA HOLDINGSが、NTTドコモとの合弁会社となることが発表された。
TOB(株式公開買付け)によりCARTAは上場廃止し、ドコモと電通が共同出資する形となる。ドコモのモバイル広告子会社D2CもCARTA傘下に統合される。
デジタル広告の中心企業として両社が戦略的にCARTAを据える形だ。
両社はかねてより広告領域で協業関係にあった。2000年設立のD2Cはドコモと電通の合弁で、携帯広告の先駆者とされる。
近年では屋外広告のデジタル化を進めるLIVE BOARD(2019年設立)にも共同出資し、2023年には博報堂DYも参画した。データドリブンな広告領域での連携を段階的に深化させてきた。
一方、各社単独でも再編を加速している。
ドコモは2023年にマーケティングリサーチ最大手インテージHDに資本参加し、自社子会社だったドコモ・インサイトマーケティングの株式を譲渡。
電通はデジタル広告専業のセプテーニHDを2022年に連結子会社化。約160社の国内子会社も2024年までに6社に再編するなど、効率化と専門性強化を進めている。
今回のCARTA合弁化は、両社の戦略が合致した結果と考えられる。
ドコモはdポイントを核に、ファーストパーティデータを活用した広告配信基盤の構築を目指す。
電通にとっては、豊富なユーザーデータと配信チャネルを持つドコモとの連携は、Cookieレス時代における競争力の源泉となる。
今後、CARTAを軸としたドコモ×電通連合は、広告の計画・配信・効果測定までをIDベースで一気通貫に提供可能となる。
業界内では「広告・通信・データの融合」による新たなマーケティングモデルの到来と見られ、競合各社の動向にも影響を与える可能性が高い。
“記者もオフィスも存在せず?” AI活用のニュースサイトに偽装疑惑
Press Gazetteによると、米IT系ニュースサイト「Levelact」が、実態としてはほぼAI生成と見られる。
Press Gazetteの調査によれば「編集者Marc Mawhirt」「Barbara Capasso」といった執筆者は、LinkedInなどに実在を示す情報がなく、職歴や実績も確認できない。
サイト上の編集部集合写真は、実はストックフォトの加工画像と見られる。また、オフィス所在地も信頼性が極めて低い 。
サイトは昨年11月に急造されたもので、97,000人の購読者を自称しながら、AI生成イメージや記事構成が多用され、編集・著者の実態検証が難航している。
業界では、「クリック誘導やリード獲得目的の自動生成メディア」ではないかとの警鐘が鳴らされている。
日本でもまだここまで大掛かりなフェイクと思われるメディアは出てきていないが、同様のことが起きる可能性はあると思われる。
# 🗾 国内ニュース
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フジHD清水賢治・次期社長が明かす「コンテンツへの大転換」計画!“脱・放送起点”へ開局65年で初めて取り組む、抜本改革の中身(ダイヤモンド・オンライン)
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雑誌記者から月間4億PVのメディア運営へ 文春オンライン初代編集長が語るキャリアとスキル(一般社団法人デジタル・ジャーナリスト育成機構(D-JEDI))
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メディア総接触時間は440分で過去最高/TVerの利用率は6割に迫る【博報堂DYMP調査】(MarkeZine)
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Webメディアが総視聴時間の6割超え。テレビニュースへの信頼度は全世代で低下【ボストンコンサルティング調査】(RTB SQUARE)
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Webサイト表示で我慢できる時間は「10秒以下」が71.3%【MMD研究所調査】(MarkeZine)
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不祥事知らずの「AIタレント」CM席巻 知財対策なお課題(日本経済新聞)
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フォロワー5000→8000人、note公式インスタ運用の裏側をぜんぶ書く(note)
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TVer、広告売上2.2倍に コネクテッドテレビが後押し(日本経済新聞)
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「ググる」は本当に死ぬのか? 生成AI時代に活きるGoogle検索を考える(Forbes JAPAN)
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「勝てない勝負はすべきでない」 Google のAI検索普及でライフスタイル系メディアはSEO対策をどう変える?(DIGIDAY[日本版])
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note、AI事業者へのコンテンツデータ提供を8月から開始・・・クリエイターの意思で参加を選択できるシステムを構築(Media Innovation)
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韓国NHN 日本以外の電子コミック配信サービスを終了へ | 聯合ニュース(聯合ニュース)
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前代未聞の挑戦を成功させた戦略とは - はてなが集英社と振り返る「少年ジャンプ+」の10年【前編】(Hatena Developer Blog)
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1,000万人が熱狂するマンガ雑誌を目指して - はてなが集英社と振り返る「少年ジャンプ+」の10年【後編】(Hatena Developer Blog)
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ALiNKインターネットが運営する天気予報専門メディア「tenki.jp」、ポイントサービスを実装(Media Innovation)
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日本経済新聞社、日経電子版の新規会員拡大とエンゲージメント向上のためにKARTEシリーズを導入(プレイド)
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ビジネス映像メディア「PIVOT」、アプリ・WebおよびYouTubeチャンネルにおける動画内CM枠の提供を開始(PIVOT)
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朝日新聞、ファクトチェック編集部を発足 態勢を強化 SNSも検証(朝日新聞)
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【速報】産経新聞、土曜夕刊休止へ(47NEWS)
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東京新聞が土曜夕刊を8月から休止、産経新聞も大阪本社管内で発行の土曜夕刊を休止(読売新聞オンライン)
# 🌏 海外ニュース
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トランプ米政権、TikTok売却期限を9月に延長 中国交渉が停滞 - 日本経済新聞(日本経済新聞)
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ニューヨーク・タイムズ 、AIと初提携 Amazonとライセンス契約を締結(DIGIDAY[日本版])
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Googleは、検索部門およびその他の組織において従業員の早期退職制度を導入している(The Verge)
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Washington PostがSubstackと、同社のライターを活用する件で交渉中(the Guardian)
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Googleは、検索結果に対して「Audio Overviews(オーディオ概要)」のテストを実施しています(TechCrunch)
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MLBが人気スポーツメディアJomboy Mediaに戦略的出資──デジタル時代の“ファンエンゲージメント再構築”(Media Innovation)
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ガーディアン、アプリにケンブリッジ大学と共同開発したセキュアメッセージ機能を搭載(Media Innovation)
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サブスクリプションの成長が、The Economistの記録的な売上高の年を後押ししました(Press Gazette)
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Daily BeastはRedditとFacebookでのアクセスが増加する一方、Facebookからのトラフィックが減少(Press Gazette)
# 📕 出版関連ニュース
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学研・宮原社長の経営教室「征服しないM&A、グループ内で競わせる」(日経ビジネス電子版)
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「書店と図書館の連携」じゃなくて「書店と図書館と何か」で連携しないと意味なくないですか?(出版・読書・コミック・図書館・デジタルパブリッシング)
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集英社「 LEE 」の三位一体メディア戦略 編集力とコミュニティが生むビジネス創出力(DIGIDAY[日本版])
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セブンネットとhonto連携 コンビニ受取と電子書籍一本化(Impress Watch)
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集英社に連載漫画家向け執筆サポートサービス「集英社WELBOX」の提供開始(イーウェル)
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ジャイブ、25年2月期決算は最終損失6800万円 電子書籍流通と編集事業はエブリスタに譲渡 紙書籍の流通を主な事業内容に(gamebiz)
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女性アイドル誌「BIG ONE GIRLS」が発売中の「6月号/夏号」で休刊へ アイドル誌休刊の波止まらず(Media Innovation)
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米で独立系書店ブーム 増える人種・性的少数派の店主「分断解消を」(日本経済新聞)
# 📍 ピックアップ
知的財産としてのジャーナリズム
2025年6月、フランス・カンヌで開催されたCannes Lions International Festival of Creativityにて、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)社のCEO、Meredith Kopit Levien氏が登壇し、AI、YouTube戦略、そしてジャーナリズムの未来について語った。
Levien氏は、NYTが近年重視しているのは単なる情報提供ではなく、「真剣なジャーナリズム」に根ざした価値創造だと述べた。それは単に報道の質に留まらず、購読者や広告主からの信頼獲得にも直結する。同氏によれば、信頼性の高い報道こそがビジネスとしても持続可能な強みとなる。
AI企業との関係においては、特に知的財産(IP)の保護に重きを置く姿勢を明確にした。OpenAIおよびMicrosoftに対する訴訟の提起に加え、5月にはAmazonとのライセンス契約を発表した。
NYTのコンテンツを「データ」ではなく「知的財産」として捉え、商業的に公正な取り扱いを求める姿勢を示した。
このような取り組みの背景には、NYTが従来から取ってきた「長期視点に立ったデジタル戦略」がある。
BuzzFeedなどが高速な拡大を目指したのに対し、NYTは意図的に慎重な展開を行い、価値観に沿った成長を追求してきた。特に、自社プラットフォーム上でのサブスクリプションモデルの強化は、その戦略の中核をなしている。
新たな動画プラットフォーム戦略にも着手しており、YouTube上では「Ezra Klein Show」などのオピニオン系番組を展開してる。TikTokへの展開が後手に回った反省も踏まえつつ、YouTubeでは意図的な内容選定とブランド強化を図る。
単なるリーチ拡大ではなく、深い関係性を築くユーザーとの“接点の多様化”を重視する姿勢が読み取れる。
今回の講演からは、AI時代におけるメディア企業の生存戦略が浮き彫りになった。
特に注目すべきは、AI企業との関係性において受け身になるのではなく、「知的財産の主体」として攻めの姿勢を貫くことの重要性である。
メディアが自らの価値を明確に定義し、それを武器に企業と交渉することこそが、今後の産業構造における存在感を保つ鍵となるだろう。
本インタビューはSemaforのMixed Signalsで聴くことができる。
# 編集後記
NYT CEOのインタビューが面白かったです。
この戦略的に動けてる感は、どういうところから出てきてるのか気になるところはあります。

老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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