集英社の情報漏えい セキュリティに投資すべき意味 Publidia #276
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最新回は#54、以下になります。
# 🚩 トップニュース
リテールメディアは今後も成長、サブスク疲れも
PwCの「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2026–2030」によると、世界のエンタテイメント&メディア市場は2030年に4.2兆ドル規模まで拡大する。成長をけん引するのは広告で、2025年に初めて1兆ドルを突破し、2030年には1.4兆ドルに達する見込みだ。なかでもリテールメディア内の検索広告はCAGR(年平均成長率)9.3%と勢いがあり、AmazonやWalmartの広告収入も急増している。リアルな体験への需要も強く、DOOHや展示会、オンラインベッティングが伸びる。一方、OTTは成熟市場で「サブスク疲れ」が見え始め、成長が鈍っている。従来型テレビは縮小が続き、従来型の検索広告もCAGR3.8%にとどまる。なお、数値はいずれもグローバル全体のもので、日本市場単独の予測ではない。(RTB SQUARE)
パブリッシャー向けGoogleの試験プログラムはわずかな収益
Googleが、AIの回答に使われたコンテンツの対価をパブリッシャーに支払う試験プログラム「AI contribution」を進めている。AI Overviews、AIモード、Geminiの回答に記事が大きく貢献したとGoogleが判断した場合に支払う仕組みで、参加するとSearch Consoleに月ごとの支払額が表示される。ただ、金額の決め方は説明されておらず、月によって額が大きく変わっても理由は知らされない。DIGIDAYによると、参加媒体の幹部は「かなりのブラックボックスだ」と話す。Googleはこれを初期段階の試験と位置づけ、参加後もいつでも離脱できるとしている。The Informationの報道では、参加は約100媒体。中小のブログやサイトでは支払額が広告収入の0.1%に届かず、数カ月で1,000ドルに満たないところもある。数カ月前に参加した媒体は累計5万〜6万ドル、初期から参加している媒体には年100万ドルを超えるところもある。大手の幹部からは、提示額が低すぎて参加する意味がないうえ、参加すれば「対価は払っている」とGoogleに主張する余地を与え、交渉力を失うとの指摘がある。(Digiday)(Search Engine Land)
Paramount、州による訴訟で和解、合併に道
Paramount Skydanceは9月21日、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収差し止めを求めて提訴していた12州の司法長官と和解した。買収額はNYTが1,110億ドル、Axiosが1,100億ドルと報じている。州側を率いたカリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は「この合併を支持するものではない」とくぎを刺した。CNNやCBS Newsの売却、ケーブル局の切り離しといった措置は見送られ、代わりに行動面の約束を積み上げる内容となった。映画は買収完了後2年間は年30本以上、続く3年間は年32本以上を劇場公開し、米国内の制作に5年で計15億ドルを追加で投じる。CNNとCBS Newsの編集の独立を担う委員会も設ける。義務を果たせなければ事業の一部売却を求められる。合意は裁判所の承認を経て確定する。デビッド・エリソンCEOは約2週間での買収完了を目指している。実現すれば、2つの映画スタジオに加えてParamount+とHBO Max、CNNとCBS Newsを抱える巨大メディア企業が生まれる。(The New York Times)(Axios)
# 🗾 国内ニュース
生成AIで商品調べたら…詐欺サイト 犯罪集団が検索結果を不正操作(日本経済新聞)
決算:LINEヤフー、シナジー不足に投資家不満 カカクコム狙うも懐疑的(日本経済新聞)
ドンキ、「トイザらス」日本事業を買収 全150店舗を継承(日本経済新聞)
トイザらス「皮肉」な日本撤退 出店規制に風穴、家電量販店に屈す(日本経済新聞)
11月5日開催の「StoryHub Ensemble 2026」全タイムテーブルが確定、一挙公開!(StoryHub株式会社)
イレブンラボ、「演じる」AI音声モデル「Eleven v4」を提供開始 低遅延版「Eleven v4 Turbo」も同時公開(Eleven Labs Japan合同会社)
【速報】声が「パブリシティ権」の保護対象と認める判決 津田健次郎さんの訴え退けるも東京地裁が初判断 TikTok運営会社に生成AI動画の削除求めた訴訟(TBS NEWS DIG)
生成AI検索時代に対応した、新しい広告メニュー 「AIO/GEOタイアップ」を提供開始(株式会社朝日新聞社)
講談社の編集力と映像制作力で“企業の物語”を映画化 新事業とアワードを設立(TOKYO HEADLINE)
日経エンタ電子版が創刊、強化する「BtoB」とマーケティング視点(朝日新聞)
オールドメディアとの揶揄「愉快ではない」…新聞協会・中村会長が語る、20年で売上高が半減した新聞業界の現在地(東洋経済オンライン)
【SHINBUNYA~新聞屋の新分野~】日刊スポーツNEWS 「日刊スポーツ・プレミアム」記事を超えた“体験”でファンとつながる(The Bunka News デジタル)
NHKのウェブニュース、閲覧回数が急落 新聞・民放と共闘の道は(朝日新聞)
大人向け「しまじろう」グッズ完売続出 ベネッセが77種類(日本経済新聞)
異業種がゲームでIP育成、サンリオは音ゲー新作 東映はゼロから創出(日本経済新聞)
エンタメスタートアップの転換期|波乗りから、波の起点に(水野和寛 / Minto)
Link-Uグループ、CrunchyrollのCCOの末平アサ氏が社外取締役に就任(RTB SQUARE)
スマホ片手に「ひとり飯」 デジタル時代が生んだ新たな食の作法(日本経済新聞)
「推し活疲れ」3人に1人 過剰な情報、金銭的負担重く(日本経済新聞)
ウェブメディアって何年で消えちゃうの? 30年分の「生き死に」並べてみたら(ギズモード・ジャパン)
2026年10月26日 藤村厚夫氏・新野淳一氏:「紙」から「Web」、そして「AI」へ——「@IT」起業からメディアの現在を考える(日本電子出版協会)
【ハイブリッド開催】荒波上等。〜Internet Media Day 2026〜(JIMA)
オープンインターネットを諦めない理由(株式会社CEESAW)
経済メディアは紙媒体の苦境とAIの脅威にどう挑む?サブスク競争の打開策を週刊ダイヤモンド・日経ビジネス・東洋経済の編集長らとEXITが考える(ABEMA)
Webメディアの危機「5年も持たない」 エージェンティック広告に期待(日本経済新聞)
日本のパブリッシャーへのAIボット流入が半年で50%増、世界平均を上回るペースに —— 株式会社LINC、AIコンテンツライセンス事業で設立(株式会社LINC)
ドラマ「VIVANT」爆破映像にAI テレビ局、制作コスト削減へ活用(日本経済新聞)
「マガジン航」終了のお知らせ(マガジン航[kɔː])
「クリスタ」素材、大量非公開でユーザー混乱 人物だけでなくペンや公式素材まで セルシス「誤判定もあった」が……(ITmedia NEWS)
クリスタ素材非公開、セルシスに詳しく聞いた 「英国政府とは無関係」……決済事業者は?(ITmedia NEWS)
Google 生成AI機能のオプトアウト(非表示)を実施→再表示した結果(バカに毛が生えたブログ(バカ毛))
新旧メディアつなぎ社会を「再想像」する 編集者・若林恵さんの戦略(朝日新聞)
# 🌏 海外ニュース
ネイバーウェブトゥーン、違法サイト閉鎖で新規購入8倍(朝鮮日報)
シンガポール、ドゥームスクロール対策で読書に報酬を支払う(Singapore pays people to pick up a book in battle against doomscrolling)(The Guardian)
ChinAI #374:中国初のAI生成による長編テレビドラマ(ChinAI #374: China’s first AI-generated longform TV series)(ChinAI Newsletter)
メディア幹部、AIに警鐘(Media execs sound alarm on AI)(Axios)
Perplexity はなぜクリエイター獲得に数億円規模の予算を投じるのか?(DIGIDAY[日本版])
Axios、AIモデル・エージェント向けの新フィード「Axios Direct」を準備、売上は2026年目標を突破(Axios preps new Axios Direct feeds for AI models, agents as revenue tops 2026 goal)(Digiday)
Vice、Forbesなどが引用した著名アートセラピストはAI生成だった(Prominent art therapist quoted by Vice, Forbes and others is AI-generated)(Press Gazette)
AIがウェブトラフィックを変え、リンク経済が崩壊(Link economy breaks as AI reshapes web traffic)(Axios)
Chrome、ウェブ上の広告過多を測る新たな指標を導入(Chrome Has A New Way To Measure Ad Overload On The Web)(AdExchanger)
Google、Discoverで「Dive deeper」をテスト パブリッシャーにとっては好ましくない(Google testing "Dive deeper" for Google Discover - it's not good for publishers)(Search Engine Land)
広告業界はGoogleの垂直統合型アドスタックへの依存を現実的に減らせるか?(Can adland realistically reduce its reliance on Google’s vertically integrated ad stack?)(Digiday)
Google広告事業の米裁判「独占認定」も分割せず 行動規制にとどまる(日経クロストレンド)
Appleの最新OS、Safari上でThe Trade Deskの広告配信をブロック(Apple’s Latest Operating System Blocks The Trade Desk From Serving Ads On Safari)(AdExchanger)
Taboola、広告ネットワークDianomiの買収提案で金融分野を狙う(Taboola Eyes The Finance Vertical With An Offer To Acquire Ad Network Dianomi)(AdExchanger)
Infillion、Foursquareを買収し、拡大を続けるアドテクスタックに位置情報データを追加(Infillion Acquires Foursquare, Adding More Location Data To Its Ever-Growing Ad Tech Stack)(AdExchanger)
企業路線に転じたWattpad、ユーザーは「イタかった」時代を懐かしむ(As Wattpad Takes a Corporate Turn, Users Miss Its Cringe Years)(The Walrus)
Disney初のCTO、かつて同社がキャラクター模倣で非難したAIスタートアップを率いていた(Disney's first CTO led an AI startup it once accused of copying its characters)(TechCrunch)
サブスクリプションの「玄関口」をデザインする(Designing the Front Door to Our Subscriptions)(NYT Open)
世界ニュースデーにメディアへの信頼の重要性を探る(Exploring the importance of trust in the media on World News Day)(FIPP)
パブリッシャー300社がワシントンへ、AIスクレイピング規制の「悪質ボット」法案を働きかけ(300 publishers head to D.C. to push ‘bad bots’ bill on AI scraping)(Digiday)
CNNなど米メディア、取材禁止措置でトランプ氏提訴 代表撮影が停止(日本経済新聞)
Semaforはビデオ責任者の役割をどう再定義しているか(How Semafor is redefining the head of video role)(Digiday)
Newsquestの2025年決算、デジタル購読者の増加を示す(Newsquest accounts 2025 show digital subs growth)(Press Gazette)
『Good Housekeeping』MDのリズ・セトル:「今は2000年代初頭以来、雑誌で働くのに最良の時期だ」(Good Housekeeping MD Liz Settle: “This is the best time to work in magazines since the early noughties”)(MediaVoices)
2026年夏のメディア業界:未来を左右する3つの重要な動き(Forbes JAPAN)
Google 依存脱却へ米国メディアはどう動いた? 組織再編と最新施策実例(DIGIDAY[日本版])
The Times、Telegraph、Hearstは長期的で持続可能なオーディエンス成長のため、いかに量より質を優先しているか(How The Times, Telegraph and Hearst are prioritising quality over quantity for long-term, sustainable audience growth)(MediaVoices)
英国老舗メディアのReach、AIによるトラフィック急減で編集部門220人員削減(RTB SQUARE)
ロイター はなぜサブスク施策で広告収入を伸ばせたのか? AIが導く新しいメディア収益化(DIGIDAY[日本版])
Financial Times、2025年の売上高が過去最高の5億6600万ポンドに(Financial Times reports record revenue of £566m in 2025)(Press Gazette)
BBC、Guardian、Q5が教えるパブリッシャー向けクリエイター動画のヒント(Creator video tips for publishers from BBC, Guardian and Q5)(Press Gazette)
雑誌大手Hearst UK、3年間の減収を経て増収に転じる(Mag giant Hearst UK returns to revenue growth after three years of decline)(Press Gazette)
Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートにマルチモーダルフィルタが追加(Google Search Console performance reports gets multimodal filter)(Search Engine Land)
メディアはもはやコンテンツだけでなく、参加の場である(Media Is No Longer Just About Content, It's About Participation)(MediaPost)
シリーズ「世界で広がる"メディアの将来"をめぐる議論」① ~イギリス発 メディア改革の注目点~ #726(NHK放送文化研究所)
Googleは独立系メディアの首を絞め、その力をますます強めている(Google Has Its Hand Around the Throat of the Independent Media and It's Squeezing Harder and Harder)(Futurism)
The Guardianは強固で継続的なオーディエンスとの関係と収益をどう築いているか(What The Guardian is doing to build robust recurring audience relationships and revenue)(MediaVoices)
New York TimesとA24、Letterboxdの買収を検討(New York Times and A24 Circle Letterboxd in Potential Deal)(The Hollywood Reporter)
# 📕 出版関連ニュース
かいけつゾロリ、インドに進出 ポプラ社が現地法人「文化育つ余地」(朝日新聞)
ポプラ社 インドに現地法人を設立 中国での経験を糧に 加藤裕樹社長、大村崇グローバル戦略室長に聞く(The Bunka News デジタル)
読書することでお金がもらえる?とある国の新国家プロジェクトを解説(J-WAVE NEWS)
出版で広がる小ロット印刷 品切れ防ぎ在庫抑制、広済堂が新サービス(日本経済新聞)
【イベントレポート】めちゃコミック、新漫画レーベル「HACHA」発表会を開催漫画・出版業界関係者ら約170名が来場(株式会社めちゃコミック)
漫画出版社ソラジマ、コミックス紙単行本の全国書店への流通を強化。今後、新たに4点刊行予定。(株式会社ソラジマ)
書店の利益合計4.6倍の40億円 25年度、カフェなど複合展開で(日本経済新聞)
南米最大級の書籍展示会で過去最多76万人来場、日本のマンガが人気(ジェトロ)
出版取次の日販、米AI企業に書籍を大量販売か 業界団体が説明要求(朝日新聞)
書協 日販のアンソロピック書籍販売報道で事実確認 再販契約の運営方針等で見解求める(The Bunka News デジタル)
日本の古本50トンを買い付けた「米国の大口客」の正体(中央日報)
ノンフィクション盛り上げたい……講談社「Tropic」が特集(読売新聞)
韓国「読書はかっこいい」ブームの立役者 歯が抜けても本を作るわけ(朝日新聞)
読書率は過去最低。なのに20代は高い?流行が一瞬で廃れる韓国で、約2年続く「テキストヒップ」の正体(KORIT)
株式会社トップスの全株式取得に関するお知らせ(株式会社講談社)
講談社、フィギュア製造のトップス買収 自社IPのグッズ展開(日本経済新聞)
『ViVi』2027年隔月刊化のお知らせ(講談社ADステーション)
「MARVEL|KADOKAWA」始動、独自の漫画作品を制作へ スパイダーマン、スパイダーグウェン作品のコンセプトアートを解禁(株式会社KADOKAWA)
トーハン創立77周年 大西社長メッセージ(株式会社トーハン)
「少年ジャンプ+」が編集者 林士平との業務委託終了を発表 『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』などを担当(KAI-YOU)
【下山進=2050年のメディア第88回】出版界『今そこにある危機』 元経産大臣齋藤健は文化安全保障を主張する(AERA DIGITAL)
メディアドゥ ネットギャリー社を売却 発売前ゲラWeb閲覧「ネットギャリー」は継続(The Bunka News デジタル)
さいたま市民は図書館好き?貸し出し点数が22年連続で指定市トップ(朝日新聞)
本の作られ方が変わってきた——AIが出版業界に迫る静かな地殻変動(Yahoo!ニュース)
単行本4000円時代が来る前に考えておくべきこと(前編)(田中裕士)
単行本4000円時代が来る前に考えておくべきこと(中編)(田中裕士)
単行本4000円時代が来る前に考えておくべきこと(後編)(田中裕士)
世界の出版業界の『地図』が変わる――フランクフルト2026、6つの注目テーマ(mizuho furuhata)
出版社には「まっとうに怒るための組織」が必要なのではー海外出版社で増えるAI責任者(mizuho furuhata)
【北米エンタメニュースまとめ番外編】海外で紙の漫画の単行本はいくらなら売れるのか?(libro)
# 📍 ピックアップ
集英社の情報漏えい セキュリティに投資すべき意味
集英社は2026年9月28日、ファッション誌メディアのブロガー管理システム「HAPPY PLUS COMMUNITY」が不正アクセスを受け、個人情報が漏えいしたと公表した。対象はブロガー2,835人で、氏名・住所・電話番号・メールアドレスといった連絡先に加え、結婚状況や子の有無、身長、肌タイプなど個人別画面に登録された属性情報まで含まれる。さらに案件情報630件、システムが送信したメール11,237件、取引先一覧10,780件も漏えい対象となった。
原因について同社は、利用していたCMSの設定不備を起点にAPI認証情報を狙う攻撃を受け、特権ユーザーアカウントを不正に作成されたと説明している。攻撃者はその管理者級アカウントでAPIを繰り返し叩き、データを吸い出した。管理画面のパスワードを破られたのではなく、API経由で正面から持っていかれた格好だ。
この一件だけなら珍しくもない。むしろ問題は、同種の事案が途切れなく続いていることにある。少し遡るだけでも事例は並ぶ。
学研メディカルサポートは2026年8月、Web制作事業部が管理するWordPressサイト78件で不正アクセスを受け、不正なアカウント生成と既存アカウントのパスワード書き換えを確認した。
地域メディアでは、まちあい徳山が運営する「Tokuyamap」が2026年7月に不正アクセスを受け、サイトに不正ファイルが設置され、検索結果のタイトルが不正な内容へ書き換えられている。
学術・医療系の出版社では、EDUWARD Pressや東西哲学書院のように、決済ページそのものを改ざんされてカード情報を抜かれる被害も起きている。
被害を受けてからではなく先回りする動きもあり、「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムは、WordPressのメンテナンスコストやセキュリティ面の課題からヘッドレスCMSへの移行を進めた。攻撃と、それを避けるためのサイト刷新が、同時進行しているのが今の風景だ。
集英社はCMS名を明らかにしていないが、同種の事案で目立つのはWordPressだ。なぜWordPressばかりが狙われるのか。
第一にシェアである。国内CMSシェアの約8割、Web全体の約4割を占めるため、一つの脆弱性で大量のサイトを一網打尽にできる。攻撃者から見ればROIが最も高い標的で、狙われるのは「そのサイトが重要だから」ではなく「WordPressだから」だ。
第二に攻撃面の広さがある。CMS本体だけでなく、プラグイン、テーマ、REST API、XML-RPC、管理画面、サーバ設定と入口が多く、しかも脆弱性の大半はプラグインやテーマに起因する。
Wordfenceの集計では2024年に登録された脆弱性は8,223件で、前年から約68%増えている。本体を最新に保っても、入れっぱなしの数十個のプラグインのうち一つが穴になれば終わりだ。集英社の『設定不備+API』は本体のバージョンの話ではなく、学研メディカルサポートの78サイトはバージョンアップを予定しながら間に合わなかった。どちらも、ソフトウェアより運用の問題である。
脆弱性が公表されれば数時間でボットによる無差別攻撃が始まり、人手の保守では到底追いつかない。
技術以上に効いているのが、運用と組織の事情だ。
出版社は特集・キャンペーン・過去企画と、一社で多数のサイトを抱えやすく、作ったまま放置される「野良サイト」が増える。
制作は外注で、納品後の保守契約がない、あるいは切れている。担当者の異動で構成もログイン情報も分からなくなり、前任者が入れたプラグインを「何が起きるか怖くて消せない」まま塩漬けにする。
編集と制作のスピードが優先される文化の中で、情報システムは後回しにされがちだ。つまり穴があることよりも、穴を誰も管理していない状態こそが本質的なリスクになっている。
ではどうするか。
まずセキュリティに投資することだ。事故が起きなければ成果の見えない投資だが、漏えい一件がもたらす信頼の失墜、通知や調査の対応コストに比べれば、保守契約と監視を前提コストとして組み込むほうがはるかに安い。
次にガバナンスを効かせる。野良サイトを作らないことが出発点で、全サイトを棚卸しし、不要なものは廃止、残すものは共通ガイドラインで統合管理する。新規サイトの立ち上げには承認プロセスを置き、「誰も見ていないサイト」を生まない仕組みにする。
そして、プラグインを無策に追加しないこと。機能が欲しいたびに入れれば、その分だけ攻撃面が広がる。導入は必要最小限にとどめ、出所と更新頻度を確認し、使わないものは停止ではなく削除する。
可能なら、機微なデータをCMSに同居させない設計も検討したい。集英社の件で被害が横に広がったのは、属性情報も取引先もメール履歴も同じCMS配下にあり、特権一回の奪取で一気に抜かれたためと見られる。
結局のところ、WordPressが悪いという単純な話ではない。シェアゆえに狙われるソフトウェアを、保守の追いつかない組織が、攻撃が商業化した環境で運用している——この三つが揃えば、事故は確率的に起き続ける。
だからこそ対策の重心は、最新のパッチを当てること以上に、運用と設計の側にある。
# 編集後記
集英社とミックスグリーンとの件がXで話題になっていますが、当事者しかわからないことが多いので、外野が騒ぐ話ではないかなと感じました。あと、誤った認識で話しているライターさんもいたりとカオスになってきたので、こういう話題にはあまり触れないようにしたいなと考えています。

老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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