米Yahoo! NewsがチャレンジするAI活用とマネタイズの課題 Publidia #249
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# 🚩 トップニュース
AP通信のAI戦略担当プロダクトマネージャー、Aimee Rinehart氏が社内Slackで「AIへの抵抗は無意味だ(Resistance is futile)」と発言し、記者たちの反発を招いた。発端は、クリーブランドの地方紙が記者のフィールドノートをAIで記事化する「AIリライト専門家」を導入したことへの社内議論。Rinehart氏はAI活用を支持し、「多くの編集者はAI執筆記事を好む」とも主張した。
これに対し記者側は「人間のライティングへの軽蔑は侮辱的だ」「AIを推進する人間は現場の実態とかけ離れた世界に生きている」と猛反発。APは「この議論はAPの公式見解を反映しない」と声明を出した。
Futurismの記事では、この発言を「tech CEO brain(テック系CEOの思考回路)に感染したようだ」と表現している(Futurism)
ドイツのメディアグループAxel Springerは英紙 Telegraph を5億7500万ポンド(約1,210億円)で買収することで合意した。これは現オーナーのRedbird IMIと英 Daily Mail 親会社DMGT が昨年11月に合意していた買収契約を上回る条件であり、DMGT を競争から排除した形となる。
Axel Springer はすでに Politico・Business Insider・Axios などを傘下に持つ。Telegraphはもともと銀行に差し押さえられ、その後長期にわたって売却先が定まらない状態が続いていた。(RTB SQUARE) (Press Gazette)
# 📍 ピックアップ
今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。
メディアは大いに創意工夫の余地がある
米Yahoo! NewsがチャレンジするAI活用とマネタイズの課題
メディアは大いに創意工夫の余地がある
先日、日本ABC協会が公開しているWebメディアのPV/UUについて徒然研究室という方が以下の様なポストをしていた。とても興味深い内容であった。

ポストでは、日本ABC協会のデータをもとに主要Webメディア86サイトの4年間のトラフィック推移を分析した結果以下の様なことが判明した。
2021年Q3ピーク比でUU・自社PVともに約半減している
特に2024年Q1〜Q2にかけては前期比-20%超の急落が発生
この結果から、一部大手の不振にとどまらず、中央値の推移からも標準的な規模のメディア全体に不可逆的な集客力低下が波及していることが示唆される。
徒然研究室氏の意見では、背景には生成AIの検索統合によるオーガニック流入減、SNSの外部送客抑制、ショート動画へのユーザー時間シフトといった構造的変化が複合的に作用しているのでは、と書かれている。
このPublidiaではPVを最重要視する状況について警鐘を鳴らしている。
なぜなのか、まず日本ABC協会に問い合わせをした際に言質を得たのだが、Web指標で発表されているPVに計測の決まりがないというのだ。メディア業界の人では知ってる人は多いが、長い記事を読んで1PVとする場合もあるし、画像を1枚みただけで1PVとしているメディアも一部存在している。つまり、同じ基準で計測していないという問題が存在する。
当然PVが高いことは見栄えは良い。手売り広告においても、PVが高くUUあたりのPVが高いということで受注が取れる場合もあるが、数年前から行われている広告代理店主導による広告効果計測の標準化(適正化)によって実態に近い状態に戻されている。
徒然研究室氏のいうとおり、不可逆的な状況となっている。
日々、メディア運営の現場を見ていて感じることは多い。
まず、検索流入の改善に関してまだ本気で手を入れられていないということ。
専門家のアドバイスを本気でやり切れていないケースもある。また、メディア専門ではない専門家が一般的なサイト向けの施策を提案することで、メディアには合わない施策になりがちな場合もある。
検索流入については、当然検索されるワードでのコンテンツを作ることも大事だがメディアのコアコンテンツには手を入れずにトラフィックを得るためのコンテンツを小手先で変えているだけの場合もある。
ユーザの行動から考えて、コアコンテンツの出し方や作り方も見直しすべきだと感じる。
また、SNSの戦略なき自動化により、徒然研究室氏が指摘している外部送客抑制の影響を受けているとことも考えられる。
しかし、日々メディア運用の中で手間がかかるからとSNSも自動投稿や手間をかけないスタイルで送客抑制にひっかかる形で投稿しているメディアは多い。
まだまだ、創意工夫の余地は大いにあると考える。
また、大きなトラフィック先と見ているYahoo!ニュースなどもAI活用やそもそもそのアグリゲータもAIの影響(とひとくくりにして良いとは思わないが)を受けている状況と考えられる。
つまり、大きなトラフィックの源泉というものがそもそもサイズダウンしていっている。
結局は自前でトラフィックをコントロールできる状況にすることも大事だと考えられる。
# 🗾 国内ニュース
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この1年の取り組み(Yahoo!ニュース)
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過剰な反復と微細な差異――悪役令嬢転生ジャンルをひも解く きりとりめでる×遠藤麻衣×白江幸司座談会[前編](MACC – Media Arts Current Contents)
経営難のFM放送「一部停波してradikoで代替」要望 災害対応に課題(日本経済新聞)
広告主がほどんど参加していない「広告健全化に向けた取り組み」のキックオフ会に参加してきた。〜広告主-広告代理店-パブリッシャー-広告事業者の「支えあい」とは?(島袋孝一*しまこ* 日経COMEMO)
# 🌏 海外ニュース
Axel SpringerがB2B不動産メディア企業Bisnowを買収(A Media Operator)
The Washington PostがBeehiivでクリエイター主導のニュースレターを開始(Axios)
2026年版英国ニュースメディア企業トップ50ランキング(Press Gazette)
アプリ内ネットワークを通じた悪質な広告が増加傾向にある(MediaPost)
NYTがゲーム内広告に初参入した背景(AdExchanger)
元アマゾン幹部がSimon & Schusterの新CEOに就任(Good e-Reader)
メタ、AIだけのSNS「モルトブック」青田買い 研究組織に人材吸収(日本経済新聞)
Amazon、ポッドキャストアプリ「Wondery」を終了へ(Forbes JAPAN 公式サイト)
Z世代はいつもTikTokを使っているが、もう好きではない(MediaPost)
# 📕 出版関連ニュース
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講談社とグッドスマイルカンパニーが明かす海外戦略──「まだまだ届いていない」マンガIP市場の可能性(電ファミニコゲーマー)
本の総合情報アプリ「本コレ」と「書店在庫情報プロジェクト」が基本合意締結 全国の書店在庫可視化とDX支援を加速(The Bunka News デジタル)
「書店在庫情報プロジェクト」と「本コレ」、サービス連携で基本合意(新文化オンライン)
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「発売日ルール」のせいで"ほぼ空のトラック"が走る、出版業界の皮肉な構造とは?読者と出版社の利益が衝突する構造の裏側(東洋経済オンライン)
米Yahoo! NewsがチャレンジするAI活用とマネタイズの課題
データサイエンティスト Nikita Roy が発行するニュースレターNewsroom Robotsにて米国のYahoo News上級副社長兼ゼネラルマネージャーのKat Downs Mulderへのインタビューが行われている。興味深い内容だったため、概要を紹介したい。
Kat Downs Mulderは、ワシントン・ポストで14年以上にわたり最高プロダクト責任者・マネージングエディターを歴任した後、現職に就いた。
2024年初頭、Instagramの共同創業者が開発したAIニュースアプリ「Artifact」が事業終了を決断した際、米YahooはそのコアテクノロジーをすぐさまM&Aで手に入れた。
Artifactの革新はレコメンドアルゴリズムにあった。従来のクリック数ではなく、ユーザーが実際にコンテンツを読んだ時間を主軸に据えた設計だ。
Yahooはこの技術を数ヶ月でアプリに統合し、セッション時間・月間滞在時間・リテンション率を主要指標として再定義した。
「クリックを誘発するコンテンツではなく、本当に知りたいという欲求に応えるコンテンツが浮上する。それが高品質なジャーナリズムへの好循環を生む(意訳)」とKatは語る。
米Yahooは現在、複数のAIプロダクトを展開している。2026年1月にベータ公開した「Yahoo Scout」は、ニュース・スポーツ・ファイナンスなど全サービスに横断するインテリジェンスプラットフォームだ。回答エンジンとしては引用元パブリッシャーを前面に出す視覚的なUIが特徴で、フラットなテキスト回答に終始する競合との差別化を図る。
また、ユーザーの興味関心に基づき毎日自動生成される音声「Daily Digest」も展開中で、朝・昼・夜の3回配信へ拡張予定だ。ハルシネーション対策として、ライセンス済みコンテンツのみを参照するグラウンディングに加え、編集チームによるトーンや時制の継続的な人間レビューを組み合わせている。
しかし、最大の課題として正面から語られたのが、パブリッシャーとの収益分配だ。
ScoutはMicrosoftの「Publisher Content Marketplace」と連携し、AI回答に使われた記事への報酬体系の構築を模索している。Kat自身が「補償モデルはまだ答えが出ていない(意訳)」と率直に認めた。
「オリジナルで独自性のある報道こそAI時代に価値が高まる。AIエージェントはユニークな情報を探し求めるからだ(意訳)」とKatは楽観論を示しつつも、その経済的恩恵がパブリッシャーに届く仕組みが整うまでの時間が問われている。
# 編集後記
最近、OpenAIからClaude派になりました。
先日、Claude Codeで作りたかったアプリケーションの開発依頼をしました。ターミナルから1行の指示のみですが、5分程度で思ったとおりのものを作り上げてくれました。
すごいと思う反面、これでSNS上で驚いてる人には色々と思うところはあります。
当然、生産性があがるという視点で、AIエージェントは革命的だと思います。
結局作れても、マネタイズやあとはちゃんとしたエンジニアが考えないと、本番公開が難しいレベルという事実もあります。
AIに触れてないということで焦る人も多いとは言いますが、徐々にで構わないとは思います。しかし、触れることは大事だと思います。

老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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