なりすまし詐欺広告への7府省庁合同要請は前進だが、穴はSNSの外にある Publidia #270
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# 🚩 トップニュース
Spotifyは、ポッドキャストの広告やイントロ、埋め込み型のスポンサー読みを1タップで飛ばせる「Skip Ahead」ボタンを、一部の有料会員向けにテスト導入した。Semaforが最初に報じたもので、Spotifyが直販した広告はスキップ対象外となる。パブリッシャー側の直販広告だけが飛ばされる二層構造になるとして、大手オーディオネットワーク各社が同社に懸念を伝え、Podnewsは広告依存番組への重大な脅威と表現した。Spotifyは既存の15秒スキップを整理したものだと説明し、この機能はむしろ聴取時間を延ばすというデータを示したうえで、テスト段階だとしている。一方、広告主側の反応は限定的で、広告代理店Oxford RoadのDan Granger氏は理論上ほどの影響は出ないとみており、出稿の引き上げも見られないという。AcastのGreg Glenday氏も、自社指標で広告をスキップする利用者は約1割にとどまり、既に価格に織り込まれていると語っている。(Semafor)(The Hollywood Reporter)
Anthropicは、Claudeが生成した文章やファイルに、AIが作ったものであることを示す電子透かしを埋め込むと発表した。EUのAI規制が求める透明性ルールへの対応で、2026年8月2日以降にEUで提供を始めたモデルから適用する。文章には読んでも気づかない形の透かしを織り込み、画像などのファイルには出どころを記録した電子的な署名を付ける。透かしはコピーして貼り付けても残る仕組みで、APIやClaude Code、Claude Coworkなどの各製品と主要クラウド経由の利用が対象となり、EU域内に限らず全世界に適用される。電子透かしを見つける検出手段も外部向けに用意する予定で、8月2日より前のモデルへの対応は作業中とし、Axiosによればその期限は12月2日である。ただし同社は限界も認めており、校正や翻訳にClaudeを使っただけの人間が書いた文章にも透かしが付く一方、大きく書き換えたり他の文章に混ぜたり、文章が極端に短い場合には検出できないことがあるという。
OpenAIも同様の対応を進めているが、現状は画像と音声が中心である。(Claude)(Axios)
# 🗾 国内ニュース
ポッドキャストが変えるネット文化 「人間というコンテンツ」への信頼(日本経済新聞)
noteはAI時代の「コンテンツ流通インフラ」になる。CEO加藤貞顕×CSO深津貴之が語るエコシステム戦略(note株式会社)
「TikTok」動画広告制作で売上高100億円へ 新興企業Yaahaが台頭(日本経済新聞)
ソニーにキティは生めるか 「キャラ不足」返上へ100億円IP育成挑む(日本経済新聞)
サイバーエージェント、2026年9月期通期業績予想を上方修正 全セグメントで好調(RTB SQUARE)
DeNAが脱ゲームにカジ 南場智子社長「AIで新規事業生み出し成長」 - 日本経済新聞(日本経済新聞)
テレ朝「映像全編AI生成」のCMを制作 「今後もAIを活用した制作に挑戦」(ITmedia AI+)
SEOタイトルの付け方とクリック率を最大化するコツ(Web担当者Forum)
テレビ局ほか大手企業との連携続く 新鋭エンタメスタートアップの強み(経済界ウェブ)
“エロ広告規制”騒動の裏で、“紙の攻略本”の逆襲 「不適切な広告なし」に保護者が反応 『てれびげーむマガジン』編集長に聞く、攻略サイト時代の生存戦略(AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議)
KDDI、ニュースアプリのグノシー株すべて売却 13億円で(日本経済新聞)
レシピやビジネスも…新聞や雑誌から回答 KDDIが新AIサービス [AIの時代](朝日新聞)
StoryHub Ensemble 2026(StoryHub)
スマートニュース、AIを活用し新領域のプロダクト展開へ 地図アプリ「Wanderland(ワンダーランド)」iOS版をローンチ(SmartNews, Inc.)
メディア事業に血道を上げる“SBI会長”北尾吉孝氏 発端は〈フジHD〉の株主総会「ネオメディア生態系をつくる」(文春オンライン)
日本のパブリッシャー(読売新聞)は、暗号署名を用いて「なりすまし」ニュースサイトに対抗している(Japanese publishers are fighting imposter news sites with a cryptographic signature)(Nieman Journalism Lab)
ニュースルームにAIが入ると、編集の対象は仕組みへ広がる(モリジュンヤ)
「それでも、届く報道をつくりたい」 ReHacQとTBSから学んだ若手記者たちは考えた(Z世代のリアル 後編) 【朝ポキ】のポッドキャスト・インターネットラジオ配信(朝日新聞)
AIが草案を作成し、彼女が質問を投げかける(AI writes the draft. She asks the questions.)(Elea.notes)
# 🌏 海外ニュース
「AI俳優」が中国席巻、スマホ向けドラマから映画まで 雇用も奪う [AIの時代](朝日新聞)
Business Insiderの新CEO、プラットフォーム外のオーディエンスの収益化に注力(New Business Insider CEO focused on monetising off-platform audience)(Press Gazette)
今週のチャート:Bookslop(Charts of the Week: Bookslop)(a16z)
2025年の出版売上高は合計334億ドルに達した(Publishing Revenues Totalled $33.4 Billion in 2025)(Good e-Reader)
AI使用の疑いにより、ある作家の200万ドル規模の出版契約が白紙撤回されました。出版業界は今後、どのような道を歩むのでしょうか(An author’s $2 million book deal was pulled over suspected AI use. Where does publishing go from here?)(The Substack Post)
Perplexity、AIエージェントへのTime誌の広告配信をブロック(Perplexity blocks Time’s ads being served to AI agents)(Digiday)
Nielsen、DoubleVerifyを21億5000万ドルの現金で買収へ(Nielsen to Buy DoubleVerify For $2.15B Cash)(ADWEEK)
レポート:「ゼロクリック・コンテンツ」へのシフト(Report: The Zero-Click Content Shift)(MediaVoices)
米パラマウント、ハリウッド撤退示唆 ワーナー買収反対のカリフォルニア州に圧力(日本経済新聞)
Google のAIクローラーを切れない理由 検索依存からの脱却を急ぐパブリッシャーのジレンマ(DIGIDAY[日本版])
偽のForbesウェブサイトと、掲載を保証するPRエージェンシー(ただし有料)(Fake Forbes websites and the PR agency offering guaranteed coverage - at a price)(Press Gazette)
Hello!はいかにしてGoogle Discoverからのトラフィックを手放した後、反撃に転じたのか(How Hello! fought back after saying goodbye to Google Discover traffic)(Press Gazette)
# 📕 出版関連ニュース
ボローニャで見つけた本という共有地 英語は下手でもノープロブレム(朝日新聞)
決算:ハルメクHDの純利益23%増 4〜6月、販管費削減で(日本経済新聞)
紙の出版物が減る一方、なぜ「声」が選ばれる? VTuberとラジオの共通点(TBSラジオ)
【丸善CHIホールディングス株式会社】本の魅力を再編集し発信する。企画展と研修、2軸で挑む価値創造(ARCH Toranomon Hills)
TaiTanがブッククラブ「ウーブン ブックス」を始動 三宅香帆や若林恵など参加(FASHIONSNAP)
パルコと講談社の新プロジェクト「渋谷スペイン坂編集室」 一つの漫画を世界へ広がるIPへ(FNNプライムオンライン)
コミケ同人誌の印刷所悲鳴 老舗は廃業、中東発インキ高も痛手(日本経済新聞)
紙にこだわり 「スピン」誌、16号全う(朝日新聞)
# 📍 ピックアップ
なりすまし詐欺広告への7府省庁合同要請は前進だが、穴はSNSの外にある
2026年8月7日、警察庁、金融庁、消費者庁、デジタル庁、総務省、法務省、経済産業省の7府省庁が、Google LLC、LINEヤフー、Meta Platforms, Inc.、TikTok Pte. Ltd.、X Corp. の5社に対し、SNS等におけるなりすまし詐欺広告への対策強化を文書で要請した。求めた内容は3点である。
広告主への本人確認の確実な実施。電子的な認証手段の活用を含む。個人はマイナンバーカードの公的個人認証、法人は商業登記電子証明書が例示されている
広告の透明性向上に係る措置。広告主の名称・所在地・身元確認の有無、広告である旨、主に生成AI技術を用いて作成された広告である旨などを利用者が確認できるようにする
削除要請への対応の徹底。刑法や金融商品取引法等に違反するおそれがある広告について、インターネット・ホットラインセンター等や法令所管省庁からの削除要請に遅滞なく判断し対応する
報告期限は2段階で、実施内容が2026年10月16日、実績が2027年3月16日。いずれもデジタル庁宛である。要請文自身が、これは行政手続法第2条第6号の行政指導であって処分ではないと注記している。
引っかかるのは要請の中身ではなく、報告項目の細かさのほうだ。求められている数字は以下になる。
本人確認の手段ごと・国内外別の実施件数と割合
本人確認の不備を理由とした掲載却下の件数と割合
削除したなりすまし詐欺広告の、理由別・契機別の件数
削除要請に対する削除件数の割合、平均対応所要時間、未削除件数の理由別内訳
自主的取組を促すための報告ではない。制度設計に使う実測値である。
連名の顔ぶれも同じ方向を指している。
2024年6月の要請は総務省単独で、経産省は透明化法に基づき別途3社にヒアリングしていた。今回は局長級8名の連名で1本にまとまり、情プラ法、透明化法、金商法29条、刑法161条1項、マイナンバーカードの公的個人認証、商業登記電子証明書と、各省の札を束ねて提示する形になっている。総務省は7月上旬に意見募集を終えていた情プラ法26条ガイドラインの改定を8月6日に公表し、なりすまし型偽投資広告を違法情報の例に加えた。その翌日に要請が出ている。削除対応の部分だけ、先に義務の側へ移してある。
助走は2年以上ある。
2024年6月18日の犯罪対策閣僚会議「国民を詐欺から守るための総合対策」、その3日後の総務省要請、同月末の経産省による3社への聞き取り結果の公表。11月の総務省総括で、メールアドレスや電話番号の認証だけでは不十分という論点が出た。2025年4月の「総合対策2.0」には、取組の実施が困難であれば実効性のある制度整備等を検討する、と条件節が書き込まれた。2026年3月に松本尚デジタル相が広告主の身元確認義務化に言及し、5月に自民党の合同PTが同趣旨の提言案をまとめ、7月17日に総務省の有識者会議が事業者の対処状況を総括した。
今回の要請は、その条件節を数字で判定する最終工程である。2027年3月の報告が悪ければ、次の通常国会に法案が出る。この2年で議論が空転していたわけではなく、むしろ淡々と条件を積み上げてきたと見るべきだ。
その上で、この枠組みには構造的な性質がある。日本のプラットフォーム規制は、事業者をサービスの種別で指定して義務を課す設計になっている。情プラ法20条1項の大規模特定電気通信役務提供者の指定も、透明化法の特定デジタルプラットフォーム提供者の指定も同じ形だ。
この設計は執行しやすい。誰が名宛人かが登記上も明確で、指定と義務と報告義務が一本で結びつく。今回、7府省庁が短期間で1本の文書に集約できたのも、対象がすでに指定済みの5社とほぼ重なっていたからである。
だが広告は、サービスの種別をまたいで流通する取引だ。出稿口は1つでも、配信する面はSNSにも一般のウェブサイトにも同時に広がる。面の種別で対象を切る限り、取りこぼしは設計上必ず残る。
国内のメディア事業者にとっての含意は、義務化をどの法律に載せるかで変わる。
情プラ法を使えばSNS前提の枠に収まるが、透明化法を使えばデジタル広告取引全般が対象になりうる。後者なら、運用型広告経由の広告を自社面に流しているパブリッシャーも、広告主が誰かを説明できる状態を求められる側に回る。生成AI利用の明示要求はクリエイティブ運用に降りてくるし、中小広告主の出稿摩擦が上がればeCPMにも響く。
取りこぼしはどこに出るか
具体的にどこが落ちるかは、サポート詐欺を見ると分かりやすい。
トレンドマイクロの2024年の分析では、サポート詐欺サイトへの誘導元の6割がGoogle広告だった。主戦場はSNSのフィード内広告ではなく、サードパーティのウェブサイトに置かれたディスプレイ広告枠である。記事中の広告枠に「次へ」「続く」とだけ書かれたボタンを出し、ページ送りボタンに偽装する手口が報告されている。
今回の名宛人は「SNS等を提供する大規模事業者」であり、対象サービスの範囲を画する根拠として挙げられているのも、警察庁統計における数字である。SNS型投資詐欺のうち当初接触手段がバナー等広告だった被害について、接触ツールの内訳はYouTube、Instagram、TikTok、Facebook、LINE、Xで合計して67.2%であり、残る約3割はこの6サービス以外の面で起きている。要請文はその3割に触れていない。
要請した3項目の効き方は一様ではない。
本人確認:広告の内容を問わないので横断的に効く。ただし事後追跡が中心で、無害なページで審査を通してから転送する手口の事前遮断にはならない
透明性:同じく横断的に効く
削除要請対応:効かない。対象が「なりすまし詐欺広告」に限定され、根拠として挙がる刑法161条1項と金商法29条はいずれも投資詐欺を前提としている
加えて、2024年の経産省ヒアリングでは項目に入っていた「事前審査通過後の出稿内容変更・差替時の審査」が、今回の3項目からは落ちている。
つまり穴は、行政の関心の外にあるのではなく、対象を面の種別で切ったことの裏側に出ている。義務化を透明化法に載せれば穴は埋まりうるが、そのとき対象は5社では済まない。
自社面に出ている広告の何割について、広告主を特定できるか。要請で報告を求められているのは5社の「SNS等」における実績であり、同じ広告主が他社サイトの枠に配信した分は集計の外にある。2027年3月に政府が受け取る数字に、パブリッシャーの面は一件も含まれない可能性が高い。その面を誰が測るのかは、まだ誰も決めていない。
# 編集後記
今回取り上げた合同要請で詐欺広告が抑制されれば良いですが、かなり時間がかかる内容だと認識しています。とはいえ前進したことは大きく評価したいです。
ただ、先日、サポート詐欺や「次へ」広告について仕事上で話題にする機会がありました。これらの詐欺広告についてですが、本来はパブリッシャー側も対策はすべき事項だと個人的には感じています。当然ビジネス上、他に手を入れる必要あることは多くあるのですが、信頼は大事だと思います。
そうした支援もPublidiaでは行っていますので、お話だけでも聞きたいという方はコンタクトを取っていただければと思います。

老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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