米国のトップポッドキャスター 収益事情 Publidia #218

今回は米国のトップポッドキャスター 収益事情、サブスクリプションから広告、ソーシャル機能へと進化するクリエイターエコノミーの雄について書いています。
アヨハタ 2025.07.27
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 # 📍 ピックアップ

今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。

  • 米国のトップポッドキャスター 収益事情

  • サブスクリプションから広告、ソーシャル機能へと進化するクリエイターエコノミーの雄

米国のトップポッドキャスター 収益事情

元ラッパーのジョー・バデンが、自身のポッドキャスト事業であるジョー・バデン・ネットワークの収益に関する詳細をニューヨーク・タイムズに明かし、ポッドキャスト業界の財務状況に光を当てた。
一般的に公開されることの少ないクリエイターの具体的な収益に関する貴重な情報を提供している。

ジョー・バデンは、元ラッパーで現在はポッドキャスターである。
2003年のヒットシングル「Pump It Up」で名を馳せ、ヒップホップグループ「Slaughterhouse」のメンバーとしてエミネムのShady Recordsとも契約していた。2018年にラッパーを引退後はポッドキャスターに転身した。

先日、バデンは自身のPatreon(クリエイターへの支援サービス)での収益を示すスクリーンショットを誤ってInstagramに投稿し、その数字が大きな話題となった
このスクリーンショットは「membership earnings(会員収入)」と表示され、90万2,000ドル(約1.3億円)という数字が含まれていたが、意図しない公開であったことが、彼の訂正投稿のキャプションからも示唆さた。
この数字が流出したことで、彼のポッドキャスト事業の規模に関する憶測が飛び交っていた。

ニューヨーク・タイムズ紙に明かされた情報によると、流出した90万ドル超という数字は、実際には2025年6月単月のPatreonからの収益であることが判明した。
ジョー・バデン・ネットワークの最高経営責任者であるイアン・シュワルツマン氏によれば、同ネットワークは今年、年間2,000万ドル(約31億円)以上の収益を上げるペースで進んでいるとのこと。

この収益額は、バデン氏がPatreonで最高額の収益を上げているクリエイターの一人であることが、Patreonの広報担当者によっても確認されている。

具体的な収益の内訳は、ニューヨーク・タイムズ紙を購読して読んでいただきたいが、その規模感はメディア企業といっても過言ではない。
また、以前はSpotifyと独占契約を行っていたが、それだけで年間2,000万ドルには到達できないとも語られており、”ポッドキャストのみ”だけではビジネスになるのは厳しいのは日本と同様の状況と感じる。

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 # 🗾 国内ニュース

  • オールインワンAI編集アシスタントStoryHub、シリーズAラウンドで累計2.5億円調達。「価値あるストーリーを共創するハブ」実現のためサービスを強化(StoryHub株式会社)

  • 記事作成支援のStoryHub、2.2億円調達 AIで質問漏れ防ぐ(日本経済新聞)

  • 幸福のインフラとしての情報エコシステムのリデザイン—AIがもたらす破壊と共創の時代にStoryHubが目指すこと(田島将太 note)

  • スレッズ が次のブランド接点になりうる可能性 コミュニティを重視した進化がコアなファン層を育てる鍵となるか(DIGIDAY[日本版])

  • GENDA、エイガ・ドット・コムを買収 映画情報サイト運営(日本経済新聞)

  • SBIネオメディアHDの副会長にNEXYZ.Group近藤太香巳氏が就任・・・グループ200社の広告管理体制刷新から着手(Media Innovation)

  • 宣伝会議とマスメディアンの持株会社KAIGI、酒井秀晃氏が新社長に就任 新体制で成長戦略を加速(Media Innovation)

  • 「漫画全巻ドットコム」のTORICO、暗号資産投資事業に5億円投入へ、株価はストップ高買い気配に(あたらしい経済 NEW ECONOMY)

  • 【ウマ娘】意外な「日本のゲーム」が、世界で売れまくっている(NewsPicks)

  • 知っておくべきことメディアの断片化とは何か?(ニールセン)

  • ユーザベース、アジア強化のため香港に新オフィスを開設(RTB SQUARE)

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# 🌏 海外ニュース

  • 決算:Netflix純利益46%増 4〜6月、値上げや広告好調で(日本経済新聞)

  • 裁判官は、Anthropicに対する集団訴訟の継続を認める判決を下した(Publishers Weekly)

  • Spotifyの新しいオーディオブックのプランは、長い本を最後まで聴き終えるには短すぎます(The Verge)

  • AI Overviews がもたらす異変 「ゼロクリック検索」はどこまで広がるのか(DIGIDAY[日本版])

  • 米フォーブス、AI時代を睨んだ組織再編・・・イベントやeコマースが伸長(Media Innovation)

  •  The AtlanticとThe Economistが、Googleの「featured notebooks」の初期パートナーとして参加(Press Gazette)

  • GoogleはAIイニシアチブに参加するニュースパブリッシャーを募集しています(MediaPost)

  • LA Timesのオーナーが、同紙の株式上場を計画している(Axios)

  • Axel Springerは従業員に対し、AIを使用しなかった場合のみ説明する必要があると伝えた(MediaPost)

  • 出版社はAI検索の変革にどう備えるべきか(International News Media Association)

  • Googleは、OpenAIとPerplexityに続き、AIの訓練を目的とした出版社との提携を検討しています(Adweek)

  • YouTubeの広告収入が急増し、ほぼ100億ドルに達しました(TechCrunch)

  • デジタルメディアの再生、大赤字から復活した「Medium」が取り組んだこと(Media Innovation)

  • 米グーグル親会社のアルファベット、最終利益19%増…クラウド事業の売上高が32%増(読売新聞オンライン)

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# 📕 出版関連ニュース

  • 『鬼滅の刃』累計2.2億部突破!4年半で+7000万部 集英社「連載終了後も圧倒的な人気」(ORICON NEWS)

  • 岩波新書 × 中公新書 × ブルーバックス、新書レーベル“三兄弟”鼎談「心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」(リアルサウンド)

  • 有隣堂 商品企画部・芝健太郎部⾧に聞く 業界DXは避けられない課題 出版社にFAX送付停止を要請(The Bunka News デジタル)

  • 2024年度の国内市場規模は前年比3.9%増の6703億円 『電子書籍ビジネス調査報告書2025』7月24日発売 飛躍への転換期に入ったWebtoon、IP戦略、海外展開、PF戦略(インプレス総合研究所 調査報告書)

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 # 📍 ピックアップ

サブスクリプションから広告、ソーシャル機能へと進化するクリエイターエコノミーの雄

コンテンツクリエイター向けのプラットフォームSubstackは、1億ドル(約150億円)のシリーズC資金調達を発表した。この資金調達により、同社の評価額は11億ドルに達し、2021年の6億5000万ドルから約70%の増加となった。

2017年に設立されたSubstackは、もともと「ニュースレターサービス」として始まった。
その核となるビジネスモデルはシンプルで、クリエイターがコンテンツを有料で提供し、購読料の10%をSubstackが手数料として受け取る仕組みである。
これにより、作家やジャーナリスト、ポッドキャスターなどが、自身のコンテンツを直接読者に届け、収益化することを可能にした。

Substackは、テクノロジーは「文化を形作るヒーローたち」に奉仕すべきだと信じており、クリエイターの独立性を守り、声を増幅し、彼らと読者の間の深く直接的な関係を育むためのツールとネットワークを構築している。
同社は2024年3月時点で、プラットフォーム上の有料購読数が500万件を超えたと報告しており、2023年の200万件から大きく増加している。

今回の資金調達は、Substackが目指す「文化のための新しい経済エンジンを構築する」という野心的なビジョンを推進するために活用される。

 読者が「自身の注意を取り戻し、関心のあるクリエイターと繋がる」ことを目的としたSubstackのモバイルアプリへの投資を強化される予定だ。
同アプリは、読者が「スマホ依存から解放され、心を回復できる場所」となることを目指している。

そして、注目すべきは、Substackのこれまでの方向性からの戦略的な転換である。

Substackは、ソーシャルネットワークの構築に多大な努力を注いでいる。
2022年に導入されたSubstackアプリには、クリエイターとのチャット、ライブビデオ会話、そしてXやBlueskyに似た「Notes」機能を通じて投稿や共有ができる機能が搭載されている。
共同創業者のHamish McKenzie氏は、同社が現在、MailChimp(メール配信サービス)よりもYouTubeに対抗することに関心があると述べている。

また、Substackは過去にソーシャルメディアや広告ビジネスに批判的な立場を取っていたが、現在は広告ビジネスに対して前向きな姿勢を見せている。
McKenzie氏はこれを「新しい可能性の認識」であり、過去の「ソーシャルメディアを破滅させた古いモデルをコピー&ペーストする」ものではないと説明している。
投資家も、クリエイターが広告機能を求めていることから、Substackエコシステム内で「ネイティブ形式の広告」を展開することに「大きな機会がある」と見ている。

約2年前には10億ドル規模の資金調達計画を断念し、従業員の約14%を解雇したSubstackであるが、今回の調達は同社の成長戦略と市場トレンドへの適応が実を結んだ形となっている。

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# 編集後記

Substackの資金調達について触れました。

Substackについては、単なるメール配信スタンドからクリエイターのコミュニティ構築プラットフォームに見事に変化しています。書き手と読者のコミュニケーションの場として機能しています。

日本版Substackと呼んでも過言ではない、このtheLetter(このPublidiaも使っています)でも、コミュニティ的な機能はありますが、そうした部分はまだ機能していないなと感じる部分はあります。

日本のユーザが、クリエイターに期待することはもしかしたらコミュニケーションではないのかも、と最近思うところはありますが、まだSubstackが現時点で作っている世界観を表現できているサービスは日本ではまだ存在しないと感じています。

これは、日本ではニーズがないのか、それともまだ空白地なのか、それは気になっています。

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。

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