出版社系デジタルメディアの苦境 Publidia #229
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最新回#43は以下になります。
# 🚩 トップニュース
米OpenAIの動画生成AI「Sora 2」で、著作権侵害が問題化している。
ポケモンなど人気キャラに酷似した動画が拡散し、批判を受けたアルトマンCEOは、著作物の無断生成を防ぐため、現行の「オプトアウト」方式を「オプトイン」に近い仕組みに改め、権利者が利用方法を細かく指定できる新機能を導入すると発表。さらに、キャラクター使用を許可した権利者への収益分配制度も検討している。(朝日新聞)
米AI企業Perplexityは、出版社向けの新サブスクリプション制度「Comet Plus」を開始し、ワシントン・ポスト、CNN、コンデナスト、ル・モンドなど米仏の大手7社と提携した。
月額5ドルのこのサービスでは、提携メディアの有料記事をAIアシスタント経由で閲覧でき、利用者の閲覧数や検索引用、AIによる記事活用回数に応じて収益の80%を出版社に分配する。従来のクリック数中心のモデルを超え、AI時代の利用実態に即した公平な仕組みを狙う。
同社は「高品質な報道機関が正当な対価を得られる新しいネット経済を作る」としている。一方、Perplexityは読売新聞やNews Corpなどから無断利用による著作権侵害で提訴されている。(Press Gazette)(日本経済新聞)(Media Innovation)
# 📍 ピックアップ
今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。
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出版社系デジタルメディアの苦境
出版社系デジタルメディアの苦境
2025年に入り、出版社が運営するデジタル専業メディアの撤退が相次いでいる。小学館の「kufura」や集英社の「Yoi」は相次いで終了を発表し、いずれも他メディアへの移管という形式をとった。だが実質的にはブランド単独での継続が困難になった格好だ。
背景にあるのは、広告依存型モデルの限界と感がられる。
デジタルオンリーメディアの主要収益源は運用型広告であり、PV(ページビュー)を稼げなければ成立しない。一般的に1PVあたりの単価は数円程度、場合によっては1円を下回ることもある。
高コスト体質の出版社において、こうした薄利構造のビジネスを黒字化するには膨大なトラフィックが必要となる。
ABC協会の最新データでは、一例として雑誌も出している美容メディアなどは月間約900万PV程度のものがある。
既存の雑誌ブランドを持つ媒体でさえこの規模であり、ゼロからブランド認知を積み上げるデジタル専業媒体がこれを上回るのは容易ではない。さらに出版社人件費などの固定費が大きく、リクープまでの期間が長期化しやすいという構造的課題を抱える。
とはいえ、収益源は単純な広告に限らない。
LINE NEWSやYahoo!ニュースなど外部配信によるライセンス収益や、一定のブランド信頼性を背景とした純広告など、補助的な柱も存在する。ただし、それらは限られた上位メディアのみが享受できる仕組みであり、デジタルオンリーの新興ブランドには波及しにくい。
さらに中長期的には、生成AIの普及によるメディア流入減少リスクが顕在化している。AIが情報検索や要約を担うことで、ユーザーが個別サイトにアクセスする機会は減る。コンテンツの流通経路が「検索エンジン中心」から「AI仲介型」へと移行する中で、ブランド露出の最適化と収益分配モデルの再設計が急務となっている。
今後、出版社系デジタルメディアが生き残るためには、緻密な収益設計とコスト最適化が不可欠だ。編集品質を維持しつつ、生成AIや自動化ツールの活用で制作効率を高める取り組みやサイト運営コストの逓減化が求められる。
また、PV依存から脱却し、サブスクリプション、EC連携、ブランドコラボなど複合的な収益源の確立も重要となる。
今後の成否は、広告市場に依存しない新たなビジネスモデルをいかに早期に構築できるかにかかっている。
# 🗾 国内ニュース
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クレカ表現規制か DNPなどの海外向けマンガ配信、オンラインサービスを終了へ(ITmedia NEWS)
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Redditが日本語訳されてグーグル検索の結果に表示されることが増えた。(世界のねじを巻くブログ)
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サイバー・バズと講談社ViVi事業部がViVi公式SNSの妹メディア「MYPE」を新たにローンチ。トレンドを創出する、次世代メディアが始動。(株式会社サイバー・バズ)
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「検索されない世界」で生き残るために。淘汰されるメディア、生き残るメディアとは(AMP[アンプ])
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株式会社PLAY、”あらゆる映像メディア”の可能性や価値を発信する情報サイト「Screens」の事業を承継し「新Screens」として10月中旬にリニューアルオープン(株式会社PLAY)
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「DLsite」が新たな決済手段「みんなの銀行決済」の提供を10月6日より開始(電ファミニコゲーマー)
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はてなと「少年ジャンプ+」がマンガ家のためのデータ分析ツール「マンガノアナリティクス」を共同開発。10月8日(水)よりクローズドβ版が先着250名限定で利用可能に! 新人からプロ作家まで無料で使用可。(株式会社集英社)
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朝日新聞社がオールインワンAI編集アシスタント「StoryHub」を導入(StoryHub株式会社)
# 🌏 海外ニュース
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Threadsが新コミュニティ機能でXに対抗(TechCrunch)
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【老獪】81歳で世界1位、「世紀の大富豪」の野望が恐ろしい(NewsPicks)
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Duolingoは自社広告技術プラットフォームを構築中(ADWEEK)
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The Guardianのショッピングサイト「Filter」を海を渡る(Nieman Journalism Lab)
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The Free Press、Substackで5年間でゼロから1億5000万ドルの評価額に成長(Press Gazette)
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ChatGPTやGeminiで「買い物検索」が変わる? AI 時代にマーケターは何を最適化すべきか(DIGIDAY[日本版])
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Google 訴訟で浮上する「AdX売却」案 AI Overviewsで失われた広告収益は取り戻せるのか(DIGIDAY[日本版])
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EA SPORTSとThe Athletic が提携し、次世代のスポーツファンを惹きつける(The New York Times Company)
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エコノミスト誌の株式売却(Axios)
# 📕 出版関連ニュース
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約1,400店舗の書店と本の総合情報アプリ「本コレ」 2025年10月6日に誕生(CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)
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1400の書店と本の総合情報アプリ「本コレ」(Impress Watch)
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米ハーパーコリンズ、フランスおよびドイツにおけるCrunchyrollのマンガ出版事業を買収完了。(株式会社ハーパーコリンズ・ジャパン)
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地方書店のAI戦略、今井書店が「サポリィ」導入─書店ゼロ地域3割時代に示す生き残りの道(innovaTopia (イノベトピア))
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「日本のコンテンツ産業のハブになる」 KADOKAWAのグローバル担当が描く世界戦略(K-Insight KADOKAWAグループ ポータルサイト)
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オーバラップについて、小学館は保有割合が5%を超えたと報告 [大量保有報告書] (株探)
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日販IPS ドイツに現地法人設立 欧州で日本コンテンツ市場拡大(The Bunka News デジタル)
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OMOで読書体験を広げる丸善ジュンク堂のユニファイドコマース戦略【前編】(デジタラトリエ)
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薬と⼀緒に“本との出会い”も 処⽅する薬局(ファーネットマガジン)
# 編集後記
KOCが納得の結果でした。
先日、「ブッククラブ」および「読書会」について情報交換をする機会がありました。
日本で、少なくとも「ブッククラブ」はまだ流行っていないという認識を自分は持っています。
流行っていないというが、長年読書会を運営する会も存在していたり、近い形式としてビブリオバトルは色々な場所で開催されています。
しかし、多様な形で増えてない印象はあります。この点は国民性もあるのかな、と意見を述べました。
海外のブッククラブや日本のブッククラブについては、以下の2つの記事が参考になると思います。

老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて広告関連の担当や子会社事業のメディア担当ディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。
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