読書バリアフリー Publidia #120
このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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# 📖 読書とアクセシビリティ
先日発表された芥川賞の受賞者 市川沙央さんのインタビューなどで読書のアクセシビリティ環境について言及されている。
「去年まで通学していた通信課程大学の卒業論文を書くために、障害者の歴史や差別の歴史をずっとリサーチしていました。今までよりもそのことに関心が深まったと同時に、ちょっとした怒りみたいなものも生まれてきました。
なかでも、日本の読書バリアフリー環境の前進のなさに対するいらだちは執筆のいちばんの動機でした。小説も学術書も、障害者の読書が想定されていない(=電子化されていない)ものが多く存在すること自体に大きな問題があると思っています。重度障害者が本を読んだり学者になったりするとは思わないのかもしれません。
文中では、電子化という言葉でされているが、日本のアクセシビリティ環境は良くないと感じる。というより、興味が薄い会社も多いということだ。
電子化されている=アクセシビリティに対応されているというわけではない。
個人的に一番大きいい課題と感じるのはオーディオブック化があまり進んでない点だ。
オーディオブックの最大手であるオトバンクは以下のような取り組みをしている。
小学館は以下のような取り組みをおこなっている。出版社の中では、かなり力を入れている版元である。
また、業界団体で電子書籍データのEPUBのアクセシビリティ対応については仕様策定などが行われている。
しかし、出版社も主体的に興味を持って取り組まないと、よりアクセシブルな状況にはなり得ない。
アクセシビリティ対応はウェブサイトも含めて、儲けにならないからという声には出さない理由で積極的ではない。また、残念ながら制作者でも熟知している人気とそうでない人間の差も大きい。
いろんな課題は多いが、まずはいろんな人がアクセシビリティについて興味を持って欲しいと思う。
# 🧠 AI関連ニュース
Press Gazetteによる、AIとジャーナリズムの最新動向についての解説。
APとShutterstockがOpenAIとの契約を締結したことに触れている。
APはOpenAIが自社のAIツールを訓練するために、過去のコンテンツを利用することを許可する2年間の契約を締結した。一方、ShutterstockはOpenAIに画像、ビデオ、音楽ライブラリと関連メタデータを訓練のデータとして提供する新たな6年間の契約を締結した。
また、多くの大手出版社が、ニュースルームでの生成AIの潜在的な使用について考える方法についてのガイドラインや原則のバージョンを公開している。
Gizmodoなどのサイトを運営するG/O Mediaは、スタッフから「コンピューターが生成したゴミ」と非難されているにもかかわらず、AIによって書かれた間違いだらけの記事を公開している。
G/O Mediaの幹部は、Voxが入手した社内メモによれば、この驚くべき行為を強化し、近いうちにさらにAIによって書かれた記事を公開する予定とのこと。
# 🗾 国内注目ニュース
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8月1日に「Yahoo!ニュース エキスパート」が誕生します(Yahoo!ニュース)
Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラムが2023年8月1日よりYahoo!ニュースに統合される。各分野の専門家やジャーナリスト、クリエイターが情報を発信するプラットフォームで、約2600名が参加している。 -
インターネットの言論空間に「信頼」と「安全」をつくりたい――Yahoo!ニュースが取り組んでいること(Yahoo!ニュース)
Yahoo!ニュースは、信頼性と公共性に関しての取り組みを公表している。「メディアトラスト&セーフティ」というチームが存在し、記事の品質を維持・向上させるための「記事入稿ガイドライン」を策定、パートナー企業に遵守を求めたりしている。また、「メディア透明性レポート」を公開など透明性をアピールしている。
この動きは、特に強化されていると感じる出来事も見かけている。 -
「LINE NEWS」10周年🎉誕生から今まで(LINE NEWS)
LINE NEWSが、2023年7月18日に10周年を迎えた。
今までの取り組みがまとまっていて、いろんなチャレンジを行っていたのも感じる。2022年にはUIリニューアルも行っており、Y!と統合してもLINE NEWSへの継続的な投資をしていくというスタンスもうかがえる。
2022年にスタートしたLINE NEWS VISIONという縦型動画は残念ながらもうすぐ終了のようだ。 -
東宝が映画宣伝のガイエを買収、完全子会社化 ウェブ・SNSマーケティングを強化(アニメーションビジネス・ジャーナル)
東宝が、映画宣伝のガイエをカカクコムより取得する。
この1週間で一番驚いたニュースであったが、こうした宣伝機能を配給会社が持つということに、それぞれの業界で巨大化した企業が増えてきていると感じる。 -
視聴率調査、YouTubeやTVerにも拡大 ビデオリサーチが24年に試行(ITmedia NEWS)
ビデオリサーチがTVerやYouTubeなど動画配信プラットフォームを視聴率測定の対象に含める取り組みを始めると発表した。
広告出稿とセットの指標となるのであれば、意味があると感じるが、広告が分離するのであればこれは意味があるのだろうかという気もする。当然、プロダクトプレイスメンなど番組と融合した広告もセットな気もするが。 -
AIの報道利用、日経はこう考えます(日本経済新聞)
日経新聞社がAI利用のスタンスの表明をしている。
決算発表などをAIで要約して記事にする取り組みはかなり早い段階からやっている。個人情報などをAIに食わせないなど気にすべきところはきっちり表明していると感じる。 -
10月施行「ステマ法規制」何をしたら違反? 5年前の投稿でも違反になる!? 参考にすべきガイドライン | 知っておきたい法律関係(Web担当者Forum)
2023年10月1日から、景品表示法により規制されるステルスマーケティングについて消費者庁の「ステルスマーケティングに関する検討会」委員であり、WOMマーケティング協議会の山本京輔氏へのインタビュー。
わかりやすく解説されている。関係性の明示の重要性なども語られている。
# 🌏 海外ニュース
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Investigation into Amazon Prime’s “dark patterns” may affect publishe...(INMA)
米国の連邦取引委員会(FTC)がAmazon Primeのキャンセルを困難にする、いわゆる「ダークパターン」を調査している。
米国では禁止されているダークパターンだが、日本でもそういった事例は見受けられる。UXの領域で有名な長谷川敦士氏による資料がとてもわかりやすい。 -
6 technologies shaping the future of news publishing(What’s New in Publishing)
ニュースの未来を形成する6つの技術について、TwipeというSaas企業が解説している記事。
AI、SNSの複雑化、ニュースレター、オーディオ、モバイルアプリやAR/VRについて触れている。全てに飛ぶ着くべきとは思わないが、考えてやるやらないは考えても良いかもしれない。 -
‘Media is much harder than it looks’: A conversation with Hearst’s David Carey(The Rebooting)
HearstのDavid Carey氏との対談の抜粋。
新興メディア企業が苦戦する中、伝統的なパブリッシャーとしてどう取り組んでいるか語られている。 -
Vox Media、自社CMS「Chorus」を廃止へ・・・今後はWordPress VIPを採用予定(Media Innovation)
TheVergeやvoxmediaを運営するVox Mediaが自社運営メディアのCMSをChorusからWordPress VIPに変更するとAxiosが報じている。
これは、CMSの販売に注力しないということだと読める。
# 📕 出版に関するニュース
# 編集後記
もうすぐ夏休み。一年が早い。
今週も読み終わった方は、押していただけるとうれしいです。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。
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