タイパより接点づくり Publidia #130
このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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今週もよろしくお願いします。
秋が一瞬ですぎていくようです。私は、もう冬みたいな格好で出歩いています。
お知らせ
本ニュースレターでは取材や執筆継続のために、サポートメンバーを募集しています。
# 🗾 ローカルメディアの運営
2023年10月15日9:40まで無料で読めます。
朝日新聞で、「奈良の声」というローカルメディアについての記事が出ていた。10年ほど運営をしており、市民に向けて役立つニュースを配信している。
運営の資金源は寄付であり、発行者の浅野氏は掛け持ちで他の仕事もしているとのこと。
寄付の状況は、現金出納帳を公開しているので誰でも見ることができる。
その出納帳をみていて、経費が寄付額を超えている月も多く、厳しい資金繰りを感じる。当然、経費もかなり抑えながら運営している。無駄がない運営だと感じる。
ジャーナリズムと地域情報サイトを比較するのは若干違う気がするが、たとえばローカルメディアの成功例といわれる「枚方つーしん」や、その運営会社が展開している「大和とぴっく」のサイトをみると広告募集が出ている。お店や企業からの広告出稿を募っていたり、運営資金の確保は抜かりないようにも見える。
「奈良の声」のような取り組みは、うまく続いて欲しい。
2023年6月にジャーナリズムXアワードを主催している団体が行なったイベントの記事で、浅野氏がどういった取材をこなっているか詳細に語られており、読みごたえもあったので紹介しておきたい。
# 🕰️ タイパよりも接点づくり
日経新聞が、1日3分で世界がわかる「Minutes by NIKKEI」というメディアを11月に開始すると発表した。
「1日3分で世界の動きが確実にわかる」メディアを目指します。経済やビジネス、国際情勢など様々な分野の重要ニュースを日経の編集者が選び、ビジュアルも活用してわかりやすくお届けします。学生や若手ビジネスパーソンなどの「ニュースの本質を短時間で理解したい」というニーズにお応えします。
先日、20代向けにニュースとの接点についてインタビューを行なった。
その中で、衝撃的なことを言われた。そもそも、ニュースというものを見ない、Yahoo!ニュースさんは稀に見る程度、見ないといけないと思ってはいるが値段が高くてその先に進まない、という意見だった。
この日経の新しいメディアを見て、タイパを重視する若い世代にあってそうだ、という意見を見たが、そうではないと感じる。
有料という時点で、敬遠される可能性も高いと思う。先日の公正取引委員会の「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書について」でも、ニュースは無料という認識が支配的である状況だ。
おそらく、ニュースは無料という認識を崩していく必要があると個人的には考える。
当然、新聞社が取材して出している記事にとても価値はあると思うが、価値というものは個々人でその価値の大きさは変わってくる。
Minutesは月額980円でスタートするようで、その価値が若い世代は価値を感じて支払うのか、そこは今後注目していきたい。
無料にして、接点をつくるほうが良いのではという気持ちもある。
# 🧠 AI関連ニュース
BBCは、生成AIの使用を評価する際に準ずる原則を明らかにした。BBCは、この生成AI技術が「視聴者と社会にもっと価値を提供する」チャンスをもたらすと信じているとのこと。
ガイドラインには、BBCが常に公共の利益で行動し、アーティストの権利を尊重して才能と創造性を優先し、AIによって作成された出力についてオープンかつ透明であることが含まれている。
ニュース業界での信頼を維持できるよう、安全に生成AIを開発するためにテクノロジー企業、他のメディア組織、および規制当局と協力するとBBCは語っている。
Future of Media Technology Conferenceでの生成AIに関する議論とそのメディア業界での利用についての話題。
ITN, Sky News, The Guardian, AP, Future, Bauerなど、多くのメディア関連企業が生成AIをどのように利用し始めているか、また、その将来についての見解を共有がされた。
生成AIは生産性の向上、コンテンツの翻訳、アーカイブコンテンツの利用可能化、記事の基本的な構造の作成など、多岐にわたる領域で利用されているが、生中継など、一部の領域ではまだ実用化には至っていない。
テクノロジージャーナリスト、スティーブ・ロー氏は、ChatGPTについての展望とAIの将来について語った。
新しい技術の普及には時間がかかると指摘し、AIの可能性を認識しつつも、その使用には慎重であるべきだと語る。
ロー氏はAIを適切に管理し、生産性を向上させるツールとして利用することを提唱している。
# 🗾 国内ニュース
注目ニュース
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ソニー・クリエイティブプロダクツが立ち上げた二次創作グッズの流通サービス「MashRoom Cafe」は、権利元の許可を得たキャラクターやアニメ、音楽アーティストなどの二次創作イラストを募集し、審査を通った作品を公式に販売・購入できるプラットフォームを提供している。
ソニーミュージックグループの子会社が行なっていることで安心感があり、二次創作グッズの流通の場となっているようだ(FINDERS) -
読売新聞とLINEヤフーは、インターネットとSNSでのプライバシー尊重を進めるため、共同声明を発表した。両社は、インターネット上の記事やSNSでのプライバシー侵害を防ぐ新しい取り組みを実施する。具体的な取り組みとして、読売新聞はオンライン用報道指針を徹底し、記事のプライバシーを保護する。一方、LINEヤフーは、プライバシーに配慮がない記事を掲載しない方針を強化する(LINEヤフー)
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日本新聞協会は、公正取引委員会が発表した「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」についてコメントを出した。
実態報告書は、ニュースポータル大手が報道機関に対して優越的地位を占め、独占禁止法違反の可能性があることを指摘。プラットフォームと報道機関の健全な交渉を促し、交渉力の格差を是正する具体的手段を提案している。日本新聞協会は、ネット上の健全な言論空間を守るため、プラットフォームが報道機関と真摯に協議することを求めている(日本新聞協会) -
ステルスマーケティングに対する規制が日本で開始された。コーセーやカカクコムなどの企業は、新しいガイドラインを急ピッチで実装している。
規制では、「#PR」のような広告を示すハッシュタグの使用が求められ、違反企業は行政処分を受け、社名が公表される可能性がある。一方で、ステマの定義や線引きは複雑であり、規制の実効性や浸透には課題が残る(日本経済新聞)
その他のニュース
# 🌏 海外ニュース
注目ニュース
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雑誌がブランド化していく流れが起きている。
Hearst UKは、ELLE UKチームから新しいファッションとビューティーメンバーシッププログラム「ELEE Collective」を立ち上げた。年会費£149(約27,000円)で、メンバーはここだけで得られるファッションとビューティーコンテンツ、業界の専門家からのアドバイスなどにアクセスできる。
プログラムには新しいELLEアプリ、年間の雑誌購読、メンバー専用コンテンツ、週刊ニュースレター、イベントが含まれる(FIPP) -
LinkedInはニュースコンテンツに焦点を当て、ニュースの優先度を高めている。
LinkedInのエディターインチーフ、ダニエル・ロスによれば、LinkedInはユーザーがビジネスやキャリアで先を行くために世界で何が起きているかを理解する手助けをすることを重要視していると語る。また、LinkedInはビジネスニュースのパブリッシャーにとって主要なソーシャルメディアトラフィックのソースとなっている(Press Gazette) -
X は、再成長するために銀行向けのアップデートで、3つのプレミアムサービスのをテストしていると語っている。、表示される広告の量に応じて、顧客に異なる金額を請求するようだ。
現行のプレミアムプランは月額$7.99であるが、Basic、Standard、Plusのバリエーションに分けられる予定とのこと(Bloomberg) -
元DIGIDAYの編集長のニュースレターで、テクノロジーと製品管理の重要性についてふれている。
プロダクトマネジメントの分野は急速に拡大しており、プロダクトマネージャーである必要はなく、ビジネスの課題にテクノロジーを適用し、新しい価値を生み出す方法を理解しているならば、誰でも「Product poeple」になることができると書いている。
Product peopleがビジネスの目標、技術、さまざまな利害関係者をどのように結びつけるか、どのようにしてビジネスを前進させるかについても詳しく書いている(The Rebooting) -
カナダの規制機関であるCRTCは、年間収益が$1,000万以上のオンラインストリーミングサービスに対して、11月までに登録フォームを提出する新しいルールを発表した。これにはポッドキャストを提供するオンラインサービスも含まれる。
一部のメディアやソーシャルメディアでは、このルールがポッドキャスト上の発言を政府がコントロールする第一歩であるという批判がある。CRTCは「オンラインで利用可能なコンテンツは変わらない。CRTCはカナダ人がオンラインで聞く・見るコンテンツを検閲しない」と述べ、コンテンツの選択は引き続きユーザーに委ねられると強調している(The Verge) -
ポッドキャスト業界では、成長と共にポッドキャスターに対して数千のダウンロードを提供するサービスが増えている。一部の大手パブリッシャーは、ポッドキャストのダウンロード数を増やすために、オンラインビデオゲームでポッドキャストのエピソードを再生する広告を購入したりもしている。
この問題に対処するためには、業界標準の改善とbotのトラフィックのフィルタリングが必要とされている(Semafor) -
インドネシア政府の新しい規制により、TikTokは同国での通販機能を停止した。この規制はSNS上での商品売買を禁止し、商品の広告や販売促進のみが許可されている。これは国内の中小規模の小売業者を保護するための措置で、特に中国からの低価格輸入品に対するものである。
TikTokはインドネシアのネット通販市場で急速にシェアを拡大しており、特に若者層を中心に人気がある。この動きは、他の大手ネット通販プラットフォームにとっては機会となり、勢力図に変化をもたらす可能性がある(日本経済新聞)
その他のニュース
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Amazon’s live audio-streaming platform Amp closes up shop(engadget)
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The Athletic cuts back on local podcasts(Nieman Journalism Lab)
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Canadian publishers see revenue plunge as Meta blocks news(NEW YORK POST)
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Medium expects to be profitable in 2024 as it climbs towards 1M subscribers(TechCrunch)
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Netflix is planning to launch retail destinations in 2025(The Verge)
# 📕 出版に関するニュース
注目ニュース
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集英社は米国で展開しているアプリMANGA Plusの新しいプラン「MANGA Plus MAX」を発表した。
スタンダードプラン(月額$1.99)は6,000作品以上の連載中マンガを、デラックスプラン(月額$4.99)は15,000チャプター以上の連載中および完結済みのマンガを読むことができる。
MANGA Plus MAXでは「チェンソーマン」や「ワンピース」のようなヒット作品を閲覧でき、日本、中国、韓国を除く世界で多言語に対応している(Good e-Reader)
その他のニュース
# 編集後記
来年の手帳を買いました。
ほぼ日手帳のHONという手帳です。
ここ数年、ほぼ日手帳を使っています。HONという商品が、どこか本のような佇まいでシンプルさに惹かれて今年から使ってみようと思います。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。
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メディア
ポッドキャスト:アヨハタの金曜回帰φ瑠 / メディアのげんざい / 平日回帰φ瑠
ニュースレター:Raisin On The Sylveine
コミュニティ:Discrod
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