Publidia #113
このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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最近暑くなってまいりました、半袖にしようか長袖のままで良いか悩む毎日です。
# 今週のトップストーリー
📖 読みやすさは数値に良い影響がある
Yahoo!ニュースにて、文字と行間の適切な設定について、興味深い調査を行なっている。
文字の大きさや行間を調整し、読みやすさを向上することでKPIに貢献するか検証している。
方法は以下の通りだ。
1.予備実験として、文字の大きさ行間を30種類の組み合わせで、以下の項目についてアンケートで回答してもらい、最適な設定を探る。
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文章の長さ
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文書の量
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文字の大き
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行の間隔
※実験参加者の年代や視力なども考慮した上で、結果は分析が行われている
2.予備実験をもとに、3案をABテスト実施して、以下の数値変化を計測する。
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PV
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PV/UB
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回遊
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読了率
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読了時間
デザインの改善により、ビジネスにもきっちり波及できる好例だと感じる。
ただし、文中でも書かれているが、どこかが改善することでどこかの数字によくない影響が出る部分もあり、基本的にはトレードオフであると。
この記事を書いた鈴木氏は記事の最後で、この小さな改善をミクロUXと名づけており、サービスのさまざまな所に改善の余地が眠っているという言葉を最後に書いており、とても共感できる。
改善することやABテストは、こうやってきっちり計測して検証することがとても大事だ。また、評価に使えない数値で比較や評価をしようとする人もいる。例えば、違う記事ごとでのPVやSNSのRT数など(やそれに類するネタごとで数字がそれぞれバラバラなもの)で評価することだ。
正直な話、こういった設計は専門家に任すか、こうしたテストや評価について書かれてた本を読んで取り組むべきだと感じる。
🗺 海外のローカルメディア
2021年にスタートした、米Axiosが都市別のローカル情報を伝えるニュースレターAxios Localが苦戦しているとADWEEKが伝える。
Axios Localは2023年に7月に30都市に到達するが、拡大を一時停止。
理由は2022年に、収益目標が10%届かなかったことを受けてとのこと。
Axios Localの目標が100都市だが、このペースだと到達が遠い模様。
ローカルニュース領域は、過去AOLに買収されたローカルニュースメディアPatchが苦戦をしたりと難しい分野ではある。また、アメリカでは地方紙が厳しい状況で、TwitterでもこのADWEEKのニュースをみてほら見たことかという意見もちらほら見える。
日本ではまだまだ地方紙が存在感もあり有料のウェブ版も多くある。
ウェブメディアだと大阪府枚方(ひらかた)市の情報に絞った枚方つーしんや、その枚方つーしんを運営する株式会社morondo.が神奈川県大和市の情報に絞ったやまとぴなどもある。
個人的には、このモデルが成功することを期待したい。
🗺 週刊朝日の休刊を受けて改めて考える週刊誌
週刊朝日が5月30日発売号をもって休刊となった。
それを受けて週刊誌について語っている記事が色々と出ている。
個人的には、とてもネガティブな論調の記事も出ていて、ヤバいとだけ書いてるものは一体どうしたいんだろう...という気持ちになる。
いくつかポジティブなものを紹介したい。
ハルメク編集長が語る紙媒体の役割。ハルメク自体はウェブメディアも持っているが、定期行動という直接つながってターゲットのことをちゃんと考えることの重要性が語られている。そして、ウェブメディアでは実現できないが紙媒体でできることや役割を語られている。
雑誌「LDK」は雑誌事業"だけ"では赤字だが、認証マーク事業で成り立たせているという話である。商品評価を行う関係で、広告はなしで行なっている雑誌である。
最後に、Real Soundより。新聞系メディアの難しさを語りつつ最後に書かれている文章がとても良いと感じた。
メディアごとに実現できることがそれぞれ違う。裏を返すとウェブメディアでは紙媒体に勝てない部分もある。雑誌のあり方をあらためて考え直す時期にきていると考える。
出版社で余力があるところが余力のあるうちに。
雑誌は速報性でWEBメディアに勝つことは不可能である。だからこそ、スクープをとる、記事の内容を充実するなど、独自色を打ち出していかなければ生き残れない。今回の休刊発表を機に、週刊誌や、雑誌の在り方を今一度考え直すべき時期に来ているといえる。
# 🗾 国内注目ニュース
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博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2023」時系列分析より(株式会社博報堂DYメディアパートナーズ)
「メディア定点調査2023」では、スマートフォンのシェアが初めて1/3を超えた。また、見逃し視聴サービスによるテレビ番組視聴は26.2%と急伸した。プレスにもあるが、テレビ視聴のあり方がどんどん変わっていっている。 -
CCC新社長「増田さんに忖度せず、ツタヤ改革」 非上場化から10年以上経つが、業績は振るわず | トップに直撃(東洋経済オンライン)
CCCの新社長高橋氏へのインタビュー。若干つっこんでインタビューを行なっている。 -
井上副会長様、「公共メディア」を担う気がないのならば、NHKはもう解体すべきです(スローニュース【公式】)
NHKの井上樹彦副会長が文字のみのニュースについて見直す考えを示した。そのことについて、スローニュースの熊田氏が意見を書いている。熊田氏は元NHKである。公共メディアのあり方について書かれている。 -
「作品だけでなく生態系をつくりたい」集英社が今、縦読みマンガ事業に参入する理由。「第1回 ジャンプTOON AWARD」開催(集英社オンライン)
集英社のジャンプTOON統括編集長の浅田氏のインタビュー。作家一人で作ったウェブトゥーン作品『氷の城壁』や読み切り作品など集英社はウェブトゥーンに注力姿勢を見せている。ジャンプの強みを活かして挑戦していくとのこと。 -
Web指標一覧 (2023年1-3月期)を公開しました(一般社団法人 日本ABC協会)
3ヶ月に1度発表のWeb指標。文春オンラインが前回発表よりわずかに数字を落としているが、それでも圧倒的なPVとUUを誇っている。個人的に気になったのは、AERA dot.がこの1年でふるっていない。週刊朝日を休刊してAERAに注力するという話もあるが、どうしていくのか気になっている。
# 🌏 海外ニュース
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米新興メディア苦境 「SNSで拡散」の事業モデル限界(日本経済新聞)
ViceMedia破産やBuzzFeedニュースの閉鎖を引き合いに米国の新興メディアの状況を解説。個人的には、まとめすぎだと感じる。先日公開したポッドキャストでViceMediaの破綻要因について解説したが、全体的にSNSでの拡散モデルや広告費が下がっている点などもあるが、ViceMediaは別の要因も存在すると感じる。 -
Vice Failed Because of Vice, Not Private Equity(A Media Operator)
ViceMediaの破綻は、Vice自身の決断と傲慢さやビジネスモデルの甘さが要因と。私と近い意見であった。ビジネスモデルに見合ってない評価額で調達を続けていった経営陣のミスだと感じる。 -
AIイノベーションにおけるポストの次のステップに関する発行人兼CEOのフレッド・ライアンからの発表(ワシントン・ポスト)
ワシントンポストがAI活用に注力する。タスクフォースと部門間を協力を促進するクロスファンクショナルチームの立ち上げを行う。 -
Twitter referral traffic for publishers: Five-year decline for platform(PressGazzette)
Chartbeatの調査によると、1350のパブリッシャーサイトへのTwitterからのトラフィック割合が2018年4月が1.9%であったが、2023年4月には1.2%に減少しているとのこと。イーロンマスク買収後減少傾向だが、実際には2018年から徐々に割合は減少していたとのこと。
こうした減少は、茹でガエルのようにやってくる。短期、中長期で数字は見るべきだ。 -
Spotify、ポッドキャストのホストの声でAI音声広告を開発中?(ギズモード・ジャパン)
Spotifyがポッドキャストの音声を学習してホストの声で読み上げる広告を開発中と発言。当然勝手にやらないとは思われる。エンゲージメントのメディアであるポッドキャスト、そこに差し込まれる広告はホストの音声のほうが効果は高まると考えられる。
音声広告の立ち上がりがなかなか進まないので、大きな一手になることを期待したい。 -
You're not optimizing your newsletter enough(Simon Owens's Media Newsletter)
個人的に愛読しているSimon Owensのニュースレターから。ニュースレターの最適化をした方が良いと、具体的に示している。ニュースレターを配信している方は一度読んでみてはいかがでしょうか。
# 📕 出版に関するニュース
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三洋堂HD加藤社長、営業損失に「商売をやっている意味がない」(新文化オンライン)
"本と何かを複合させるという発想から脱却できず、赤字を招いた。本にこだわり過ぎた結果、この十数年の低落から抜け出せていないのでは"という発言に重さを感じる。 -
2022年度決算説明会 トーハン
取次事業は経常赤字。2022年は書店売上が持ち直しているが、それでも赤字という点で構造上の問題と改めて認識できる。 -
小学館の青年漫画誌が集結したサイト「ビッコミ」本日オープン! 無料で『土竜の唄』723話、『アオアシ』115話、『重版出来!』116話が読めるキャンペーン開催中!(株式会社小学館)
小学館の青年漫画誌5誌を集結したマンガサイト。人気作品を無料開放しているので、本気度を感じる。登録フローなどもとてもシンプルで良いと感じる。待つと無料かお金おを払い15日間レンタルする形式。
# 編集後記
今週、ポッドキャストの収録が立て込んでるので乗り切らないと。
今週も読み終わった方は、押していただけるとうれしいです。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。
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