伝統とデジタル改革のはざまで揺れる高級カルチャー誌 Publidia #205

今回は、伝統とデジタル改革のはざまで揺れる高級カルチャー誌、OpenAI、独自SNS開発に着手について書いています。
ayohata 2025.04.20
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 # 📍 ピックアップ

今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。

  • 伝統とデジタル改革のはざまで揺れる高級カルチャー誌

  • OpenAI、独自SNS開発に着手

伝統とデジタル改革のはざまで揺れる高級カルチャー誌

The New York Timesによると米国を代表する高級カルチャー誌「Vanity Fair(ヴァニティ・フェア)」の編集長、ラディカ・ジョーンズ氏が、7年以上にわたる在任期間を経て辞任を発表した。メディア業界に大きな波紋を呼び、後任探しが急ピッチで進められている。
同誌の編集長職は、かつてアメリカン・ジャーナリズムにおいて最も栄誉あるポジションの一つとされてきたが、雑誌業界全体の構造変化を背景に、その役割と魅力に大きな変化が生じている。

Vanity Fairは、文化、ファッション、芸能、政治を横断的に扱い、知的ジャーナリズムとセレブリティ文化を融合させた独自のブランドを築いてきた。
著名写真家によるアート性の高いビジュアル、著名ライターによる調査報道、そして毎年恒例のオスカー・パーティーによって、米国文化に大きな影響力を持ち続けている。

2025年初頭時点で、米国版の月間ウェブ訪問者数は約860万(SimilarWeb調べ)、印刷版の平均発行部数は約93万部(Press Gazette調べ)と報告されており、依然として高いブランド力を維持している。

かつての編集長には潤沢な予算と自由な編集権限が与えられていたが、現在では大きな変化が求められている。ジョーンズ氏のもとで、Vanity Fairはソーシャルメディアのフォロワー数を700万以上に拡大し、スタジオ事業を通じた映像コンテンツ制作や、大型イベントの拡充に取り組んだ。
しかし、日常業務ではウェブトラフィックの改善、新たな収益源の開拓、広告収入減少への対応といった実務課題が中心となっていた。

今回コンデナスト社が発表した新たな募集要項によれば、後任者は「グローバル・エディトリアル・ディレクター」として米国外の4カ国版(英国、フランス、イタリア、スペイン)も統括する役割を担う。さらに、商業、マーケティング、財務部門と連携し、ブランド全体の収益基盤を強化するビジネス視点が求められている。

一方、Vanity Fairの将来については意見が分かれている。
前任者たちは「依然として意欲的な編集者にとっては魅力的なポジションである」と評価するものの、現実には若年層の雑誌離れや、デジタルプラットフォーム依存の強まりといった課題が横たわる。

次期のリーダーには、Vanity Fairが持つ「文化と知性の象徴」という伝統を守りつつ、デジタルメディア時代に対応した新たな成長戦略を描き、ブランドの持続的な進化をリードすることが期待されている。

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 # 🗾 国内ニュース

  • 生成AI時代のメディアビジネス戦略 、東洋経済新報社が示す「攻め」と「守り」の両輪【Media Innovation Conference 2025】(Media Innovation)

  • どう稼ぐ?ガチで考えた 朝日新聞ポッドキャスト(朝日新聞)

  • カード決済、締め出される成人作品 サイトへ「取引停止」、ビザやマスター使えず(朝日新聞)

  • ジモティー突如の急加速。売上7.9倍/300店舗出店を見据える新規事業(Tech Growth letter)

  • goo blog サービス終了のお知らせ(goo blog)

  • テレビ朝日HD株、朝日新聞社などが一部売却へ…200億円規模の見通し(読売新聞)

  • BeReal.で講談社のマンガ作品の認知を拡大! リアルイベントと広告配信で若年層にアプローチ(ホットリンク)

  • Google「検索」に排除措置命令、公正取引委員会が違反認定 巨大ITで初(日本経済新聞)

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# 🌏 海外ニュース

  • Rebooted Digg launches early-access community with $5 fee(TechCrunch)

  • The Romance Novel Startup Using AI to Publish Love Stories(boomberg)

  • Open AI はメディア広告に何をもたらすか? 米デジタルメディア企業の文脈強化戦略(DIGIDAY[日本版])

  • AI 時代におけるパブリッシャーの収益戦略 ライセンス契約と分配モデルの現状とは?(DIGIDAY[日本版])

  • Platforms like Substack offer journalists a tricky alternative to traditional newsrooms(INMA)

  • Dotdash Meredith makes major investment in People app(Press Gazette)

  • G/O Media CEO Jim Spanfeller speaks out after Quartz sale(Press Gazette)

  • What was Quartz?(Zach Seward)

  • Spotify Invests €1 Million To Help Authors and Publishers Produce More Audiobooks(Spotify)

  • Google Search is going to be google.com globally(The Verge)

  • ザッカーバーグ氏、証言台に--Meta独禁法訴訟、問われる「買収戦略」と帝国の未来(CNET Japan)

  • The power of community: How Black Ballad has redefined membership and engagement(Media Voices)

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# 📕 出版関連ニュース

  • 石破茂首相「コンテンツ産業」支援強化、出版業界への影響は? 『漫画ビジネス』著者に聞く期待と懸念(Real Sound)

  • 相次ぐ「ポッドキャスト番組発の書籍化」…「本とポッドキャスト」の可能性を考える(飯田 一史)(現代ビジネス)

  • 出版業界団体は再販の意味をまったく理解していない(かもしれない)(飯田一史)(エキスパート Yahoo!ニュース)

  • (前半無料)私の本のAI要約が販売されていたことと、今後の対策について。(内藤みか(作家) note)

  • 通期レポート【電子書籍売上高成長率】2025年2月期は累計で前年比108.9%成長、新規商流獲得などが貢献(株式会社メディアドゥ)

  • 【決算】文教堂GHD 中間営業利益2900万円に(The Bunka News デジタル)

  • 東京版権説明会2025 業界行事として規模倍増へ 国際ブックフェアの復活目指す(The Bunka News デジタル)

  • 日本出版販売株式会社との物流協業に関するお知らせ(書籍返品業務の協業開始スケジュール)(株式会社トーハン)

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 # 📌 ピックアップ

OpenAI、独自SNS開発に着手

米OpenAIが、対話型AI「ChatGPT」向けにSNS機能を開発していることが明らかになった。
複数の関係者によると、同社は現在、社内向けの初期プロトタイプを構築しており、特にChatGPTの画像生成機能にフォーカスした「ソーシャルフィード」形式を採用しているという。プロジェクトはまだ初期段階にあるが、CEOのサム・アルトマン氏は外部の関係者にも意見を求めるなど、慎重に開発を進めている。

現時点では、独立したアプリとしてリリースするのか、あるいは既存のChatGPTアプリに統合するのかは未定とされる。

なお、ChatGPTアプリは2025年3月末時点で世界中に5億人以上のユーザーを抱え、3月には世界で最もダウンロードされたアプリとなった。SNS機能が加われば、OpenAIが保有する膨大なユーザーベースをさらに深く囲い込み、エコシステム強化につなげる狙いがあるとみられる。

新機能の概要としては、ChatGPTで生成した文章や画像を利用者同士で共有し、他のユーザーの投稿をフィード形式で閲覧できる仕組みを検討している。これにより、生成AIの活用事例を可視化し、人気投稿がアプリ内で流行する仕組みも想定されている。
現在は、ChatGPTで生成されたコンテンツをX(旧Twitter)など外部SNSに投稿するケースが主流だが、OpenAIはこの流れを自社サービス内に取り込もうとしている。

この動きは、イーロン・マスク氏が率いるXに対する明確な対抗策とも受け止められている。
Xはマスク氏が買収後、AI開発にも本格参入しており、傘下のxAIが開発した生成AI「Grok」をXに統合する計画を進めている。現在、Xのアクティブユーザー数は約6億人とされ、OpenAIの5億人と拮抗しつつある。こうした状況下で、OpenAIがSNS領域に本格参入すれば、両者の競争はAI開発だけでなく、ユーザー基盤を巡る争いへと拡大する可能性が高い。

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# 編集後記

一気に夏がきました。

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにて総合メディアのディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスに関わっていました。

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