めちゃコミの価値とは?海外ファンドが買収 Publidia #166

ブラックストーンによるめちゃコミの買収、MFAサイトについてIABの非公開イベントで語られたことなど
ayohata 2024.06.23
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 # めちゃコミの価値とは?海外ファンドが買収

米投資会社ブラックストーンは、電子漫画サービス「めちゃコミック」を運営するインフォコムを約2800億円で買収することを発表した。ブラックストーンにとって、日本において過去最大の投資案件とのこと。
今年5月の頭に、BloombergがソニーグループのSMEやKKRも検討している旨が報道していたが、結果的にブラックストーンが競り勝ったようだ。その報道では、2000億円規模と言われていたが、2800億円と上振れとなっている。

ソニーグループのSMEが買収となると、取次としてのブックリスタ(ただし他にKDDI、TOPPAN、あ朝日新聞が株主にいる)、ストアとしてReaderStoreと所有しており、買収が成功すれば再編の動きがあるかと期待したが、残念ながらSMEば買収とはならなかった。

報道では「めちゃコミック」を運営する、という枕詞がついてるのでインフォコムの事業がめちゃコミック運営のみと見えるが、実際にはヘルスケア事業なども行うITサービスセグメントと、めちゃコミックを中心としたネットビジネスセグメントがある。

ITサービスセグメントのヘルスケア事業は、医療機関向けの電子カルテシステムや医療情報システムの開発・提供をおこなっており、業績の32%を占めており、2023年度は273.2億円の売り上げがある。

それに対して、ネットビジネスセグメントのめちゃコミは、業績の68%を占めており、2023年度は571.2億円の売り上げと75.4億円の営業利益を生み出している。

ちなみに、比較になるがBookliveは2023年度の売り上げは250億円(求人情報より)となっており、めちゃコミの規模の大きさを感じる。

インフォコムを持っていた帝人だが、当然繊維や医療機器で強いTEIJINというブランドとして知られている。現在は、事業ポートフォリオの変革を進めておりその一環として売却が決まったようだ。
売却には、13社を対象に買収の話をしていたと発表には書かれている。

めちゃコミの規模を考えると今後の成長も含めて安泰かというとそういうわけではない。
インプレス総合研究所の電子書籍ビジネス調査報告書2023の市場規模のグラフを示す。
当然、市場規模は年々成長しているが2021年から成長率は鈍化しており、年々成長率は鈍化傾向にある。

今後、電子書籍を仕入れて販売していくのみでは厳しいのが電子書籍ストアビジネスの全体感だとし認識している。
各社、オリジナルコンテンツの開発も行っており、めちゃコミも当然ながら行っておりテレビドラマ化になっている。ただし、ドラマ化や映画化の原作使用料は決して高くないと言われている

ウェブトゥーンの展開など含めて今後広げいてくと思われる。

電子書籍ストアは直接ユーザと繋がっており、色々と試すことができるのでビジネスチャンスは大いにあると考えられる。

 # MFAサイトへ誘導するメディア

本記事では、ロンドンで開催された IAB UK の非公開イベントで議論された内容で、主に広告収益を目的にしたMFA(Made-for-Advertising)サイトの問題について議論されている。

MFAサイトは価値のないコンテンツで広告主や消費者に害を与え、メディア広告枠の購入の複雑さによりその実態が不透明である。
以前、米国のForbesが別ドメインでMFAサイトを7年間運営していたことが明らかになり、問題の規模と大胆さが浮き彫りになりつつある。
大手広告主は品質フィルターを使用して影響を軽減しているが、MFAの定義や測定方法の確立が難しく対策が困難である。
一部のプラットフォームはMFAサイトを排除しているが、既に業界に与えられたダメージは大きく、根本的な解決には至っていない。

この議論の冒頭でMFAサイトと関わりを切り離せないものについて語らえている。OutbrainとTaboolaなどのレコメンドウィジェットの事業である。
OutbrainとTaboolaは主要なオンラインパブリッシャーと契約し、サイト上の広告スペースの提供と引き換えに最低収益保証を提供することで知られている。これにより、パブリッシャーは多額の収益を得るが、両社は損失を被る可能性がある。
News UKの幹部は、これらのプラットフォームが読者をクリックベイトのような怪しいサイトに誘導することを批判しており、いくつかのパブリッシャーは独自の推奨プラットフォームに切り替えている。

レコメンドウイジェットの業者がパブリッシャーの枠をおさえ、MFAサイトへの誘導元となっていることは有名であるが、多くのパブリッシャーは収益に目がくらみ読者にとって結果的によくないサイトへ誘導するきっかけを与えている。

MFAについては、運営社だけでなくパブリッシャーなども被害のきっかけになっていることは理解する必要がある。
当然、レコメンドウイジェットを置いてるところが一律問題あるというわけではない、対策を行っている事業者もいる。

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 # 🗾 国内ニュース

注目ニュース

  • LINEヤフーはYahoo!知恵袋の「ID非公開機能」を7月10日から廃止すると発表した。廃止理由は品質の低い投稿やマナー違反が多いためとのこと。(Impress Watch)
    Yahoo!ニュースのコメント同様、無法地帯となっていた場所へのメス入れと思われる。しかし、なぜ今まで品質の低いものを放置していたのかは気になるところだ。

その他のニュース

  • セルシス、7月1日付で主要株主である筆頭株主の異動が発生 第2位株主のLINE Digital Frontierと第4位株主のイーブックイニシアティブジャパンの合併で(gamebiz)

  • 日刊スポーツに投稿を全文無断盗用されて逃げられそうな件(大島育宙  note)

  • この17年間で電通の内勤に起こっていたこと(私見)。(小島 雄一郎 COMEMO)

  • 悪化するネット広告の体験品質 今、メディアや広告主がすべきこととは?(AdverTimes.)

  • 米AI検索・PerplexityCEO「メディアと広告収入分配」 日本でも意欲(日本経済新聞)

  • MFAサイトによるムダが増加 23年は19%増…ダブルベリファイ調べ(AdverTimes.)

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# 🌏 海外ニュース

注目ニュース

  • 米国のYahooは、Instagramの共同創設者が開発したニュースアプリ「Artifact」の技術を活用し、新しいAI搭載のYahoo Newsアプリをスタートした。興味に基づいてパーソナライズされたニュースフィードの提供や、記事の要約を示す「Key Takeaways」機能も備えていたり、特定のキーワードやメディアをブロックする機能や、クリックベイトな見出しを改善するAIも搭載している(The Verge)
    閉鎖が惜しまれたArtifactだが、4月にYahooに買収されて組み込まれた形となる。ユーザにとって居心地が良い空間になると喜ばしい。

  • Metaはカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでThreadsのAPIが公開を発表した。投稿閲覧アプリを作るのに基本的なAPIは用意されているとのことで、以前のTwitterのようなエコシステムが生まれることを期待したい(Impress Watch)

  • 毎年発行されているロイタージャーナリズム研究所のDigital News Report 2024が公開された、日本語翻訳版もNHKのサイトで公開されいてる(Reuters Institute)

その他のニュース

  • CJPAに対抗して、Googleが "小規模テスト"として検索結果の一部からカリフォルニア州のニュースサイトへのリンクを排除(INMA)

  • グーグルとパブリッシャー、アルゴリズム更新が最大の脅威(PressGazette)

  • デジタルニュースレポート2024からポッドキャストについて学んだ5つのこと(MEDIA VOICES)

  • メディアとAI(上)記事の対価巡り綱引き WSJなど提携NYTは提訴 著作権や報道の質、保てるか(日本経済新聞)

  • AI、「フェイク」時代の切り札か ジャーナリズム補完 メディアとAI㊦(日本経済新聞)

  • Forbes、著作権問題でPerplexity AIを法的措置で警告する(Axios)

  • NYTはOpenAIに対する訴訟中に、AI導入のためにアーティストを解雇していると労働組合が主張(THE BYTE)

  • パブリッシャーの「 AI ライセンス契約」に対する賛否両論 Vol.1(DIGIDAY[日本版])

  • パブリッシャーの「 AI ライセンス契約」に対する賛否両論 Vol.2(DIGIDAY[日本版])

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# 📕 出版に関するニュース

  • 日販グループホールディングス代表取締役社長・富樫建氏に聞く 新しい取次をデザインする(The Bunka News デジタル)

  • KADOKAWA株下落 システム障害が出版事業にも影響(日本経済新聞)

  • 出版業界は衰退してしまうのか?書店・宣伝・電子書籍など業界の課題を小説紹介・けんごと考える(【MEW’S BOX】カルチャー動画メディア YouTubeチャンネル)

  • CD批評誌「レコード芸術」がオンラインで9月復刊へ クラウドファンディングで実現(イザ!)

  • 集英社が挑む“タテスク”マンガアプリ「ジャンプTOON」魅力はズバリ「読みやすい」制作現場は流れ作業で効率化(オタク総研)

  • 集英社が新人事を発表 「MEN'S NON-NO」の根岸英行・編集長が「Myojo 明星」の新編集長に(セブツー)

  • 月の平均PV約3億「文春オンライン」 出版社系ウェブメディアでトップに躍り出た「花」と「団子」の戦略(AERA dot.)

  • 【決算】未来屋書店 前期 最終赤字14億円超(The Bunka News デジタル)

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# 編集後記

金土と実家があった大阪に行ってきました。

五年ぶりになるのですが、インバウンドで人が多いというのを感じました。

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。

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