新興メディアが挑戦するキュレーション Publidia #148

新興メディアSemaforが開発中のキュレーションサービス、国産WEBTOONが売上1.2億円達成、クリエイターエコノミーの難しさについて。
ayohata 2024.02.10
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このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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# 新興メディアによるAI導入とキュレーション

Semaforは「Signals」と呼ばれる製品を立ち上げ、ウェブ上の主要な話題をキュレーションする。「MISO」というAI検索ツールを開発し、キュレーションのプロセスも効率化するとのこと。
現在、英語、スペイン語、中国語や日本語など他の言語モデルも開発中である。

このMISOはOpenAIのプラットフォーム上に構築されMicrosoft BIngのカスタムされたものとSemaforのエグゼクティブエディターであるGina Chua氏は語っている。

Semaforは2022年にBuzzFeed Newsの元編集長でニューヨクタイムズのコラムニストBen Smith氏と、Bloomberg Media GroupのCEOであったJustin B. Smith氏によって設立されたニュースメディアで、特にニュースレターの形式を重視している。
海外の新興メディアAxios,Morning Brewなどニュースレターに注力するメディアも多い。

後述する、The Messengerのように広告中心かつ新しいチャレンジがないニュースメディアに残された時間は少ないと感じる。

また、新しい広告商品を言われたもの広告会社にいわれたものをどんどん導入する、流行っているからと無策でサブスクの仕組みを導入するなど、戦略がないチャレンジは危険であると考える。

また、このインタビューを掲載しているThe Vergeも2022年にリニューアルを行い、Storystreamという記者が他サイトの記事を紹介するなどし、サイト訪問者を増やしコミュニティを形成できるような仕掛けをチャレンジしている。

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 # 🗾 国内ニュース

注目ニュース

  • X(Twitter)対抗のBlueskyが流行している。BlueskyはTwitter創業者のジャックドーシー氏が構想したSNSで、招待制だったが先日から誰でも登録できるようになったことで登録者が急増している。
    暴力的なコンテンツとの接触がコントロールでき、Xには足らない機能などが存在している。
    クリエイターがアカウントを開設したことが呼び水になって多くのユーザがアカウント開設している。(Forbes JAPAN)
    ただ、一時的な流行になるとも感じている。しかし、確実に脱Xの流れは起きており、分散化していってると思われる。Threadsも無視できない存在に成長してきており、マーケティング担当者にとっては頭が痛い事態だと思われる。

  • ナンバーナインが手掛けるWEBTOON作品が月間販売金額が1.2億円を突破した。
    オリジナル作品「神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜」はLINEマンガの2024年1月の月間販売金額(国産WEBTOONらキング)で1位をとったと公表している。(株式会社ナンバーナイン)
    マンガ業界Newsまとめの菊池氏によると、2020年4月に「俺だけレベルアップな件」がピッコマにて月間販売金額1億円、「入学傭兵」がLINEマンガで月間販売金額1.8億円、「オークの樹の下」がめちゃコミックにて3億円(期間は2023年12月22日から2024年1月31日)と大きい売上を出している作品がある。しかし、いずれも日本の作品ではない。
    国産の作品がこうして大きくヒットしている作品も出てきたことで、日本も投資フェーズから市場が立ち上がってきたように感じる。
    出版社もWEBTOON領域は乗り出しているが、まだ大きなヒットの声は聞こえてこないが、今年来年以降ヒット作が出てくることを期待したい。

その他のニュース

  • 「超大物投資家」から「六本木キャバ嬢」インタビューまで…メルマガ会員48万人「みんかぶマガジン」メディアジャックの裏側(集英社オンライン)

  • 【下山進=2050年のメディア第18回】NHK NEWS WEB存続か、廃止か?単純な問題ではない(AERA dot.)

  • 被災地で求められる情報とは? ——能登半島地震から1ヶ月、東京との読まれ方の違いを分析(Media × Tech)

  • コンテンツマーケティングの戦略設計(株式会社真摯)

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# 🌏 海外ニュース

注目ニュース

  • Semaforのインタビュー「On The Record」で、ワシントンポストの新CEO、Will Lewis氏へのインタビューが行われた。
    ワシントンポストは米国内の政治状況の影響もあり失速し1億ドルの損失と1割程度の人員削減も行っている。
    インタビューで新CEOはその中で、新しい課金方法を発明し、若い世代を惹きつける可能性を示唆した。(Semafor)

  • 1,000 True Fans(1,000人の真のファン)がいることで成功するといわれたクリエイターエコノミーが非現実的だとライターのJoan Westenberg氏が書いている。理由として、支払いを行うユーザを全体の5%とした場合20,000人のファンベースを作る必要があること、直接ファンから課金することにクリエイターも躊躇していること。広告やクラウドファンディングなど多様な方法で資金を集めるべきとしている.(Joan Westenberg)

  • 2023年5月に設立されたばかりのメディア「The Messenger」が閉鎖に追い込まれまた。People、Politico、The Athletic、GIZMODOなど出身の編集者も参加していたが広告モデルで運営おり資金調達もできず閉鎖となった。 (MediaPost)
    CEOだった人物はメディア企業や新聞会社を経営していた業界としてはベテランの人物であった。広告のみのモデルで立ち上げたことで1年足らずで閉鎖となった。ここ数年、メディアの資金調達市場は苦しいと言われている。ベテランだからこそ、オンライン広告の市場予測が足らなかったのかとも感じる。

  • ニューヨーク・タイムズは2023年に1,036万人の購読者となった。そのうち970万人がデジタル専用購読者である。デジタル専用購読からの収益は11億ドルに達した。同社は、ゲーム、料理、Wirecutter、The Athleticなどに全てアクセスできるバンドル契約を推進している。
    一方で、The Athleticは依然として損失を出しているが、その額は減少している。全体の広告収入は減少し、デジタル広告収入は3.7%減少、印刷広告収入は16.2%減少している(Nieman Journalism Lab)

  • ニュースを回避する行動を行う人が多いという話がある。米国の調査では、数百万人にも上るといわれているが、その「ニュース回避」についてどう取り組むべきかジャーナリストのアドリ・コッツェ氏がMediaMakersMeetにコラムを寄せている。
    ニュース回避はコンテンツだけでなく、個人のアイデンティティや信念、使用するツールにも大きく影響され、プロのジャーナリズムとその他の情報を区別するのが難しく、業界全体で大規模なPRが必要かもしれないと説明している(MediaMakersMeet)

その他のニュース

  • MetaのThreadsはアクティブユーザ月間 1 億 3,000 万人を超え(TechCrunch)

  • Spotifyは、世界で最も聴かれているPodcast”の配信者ジョー・ローガン氏と新たな新たな契約を結んだ、またこれによりSpotify独占配信は解消される(ITmedia NEWS)

  • 買収した富豪もお手上げ「大手メディア」の惨状 デジタルで復活に期待も、赤字のオンパレード(The New York Times翻訳記事 東洋経済オンライン)

  • GoogleとMeta がニュース出版社にもっと支払うべき理由、論文執筆者が語る(Poynter)

  • Googleがジャーナリストや報道機関に向けのAI テクノロジーをつかったトレーニングツールを提供(Google)

  • DIGIDAYリサーチ: 2024年の自社については楽観する パブリッシャー 、ただしメディア業界には悲観(DIGIDAY[日本版])

  • Substackがクリエイター向けに広告販売のプラットフォームをテスト中、多様な収益方法を提供か(Axios)

  • TechCrunchが有料サブスクのTechCrunch+を修了するとADWEEKが報じる(Adweek)

  • 2024 年の 7 つの広告予測(Forbes)

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# 📕 出版に関するニュース

  • TikTokフォトモードで漫画の売上3.5倍に!“漫画好き”を増やす、出版社の新たな試みとは?(TikTok Japan【公式】note)

  • 小学館子会社、単行本のオンデマンド印刷サービスを開始。電子コミックの“受注印刷”を実現(ネットショップ担当者フォーラム)

  • 【実録】売上9割減から復活。「地球の歩き方」に学べ(NewsPicks)

  • 2024年1月期 店頭売上前年比調査ムック・文芸書・実用書・学参・開発品が前年超え、全体では95.7%|ニュースリリース(日本出版販売株式会社)

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# 編集後記

先日、天下一品とピザハットがコラボしたピザを食べました。
幸せになれるので、気になる方は売り切れになる前に食べたほうが良いです、おすすめです。

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。

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