ロイターのデジタルニュースレポート2023 Publidia #115
このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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途中でも書いてロイターのデジタルニュースレポート2023が公開されたので読み込んで、次回に感想など書きたいと考えています。
# 今週のトップストーリー
🤖 MIT Technology Reviewの改革と編集部のマインドチェンジ
先日開催されたFIPP World Media CongressにてMIT Technology ReviewのCEO Elizabeth Bramson-Boudreauが語ったデジタル変革の話を紹介したい。
MIT Technology Reviewは、2015年までは紙版のみでSNSアカウントもない状態であった。そうした中でCEO主導で改革が行われた。主に行われたのは以下2点。
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広告モデルからサブスクリプションシフト
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注目を集める記事ではなく、ターゲットを意識した記事づくりへ編集部への浸透
この記事の中で編集部のマインドチェンジが大変だったと強調されている。
PVを上げても広告単価が下がれば収益は安定しない、当たり前だがそうしたロジックは理解されづらい。日々の数字の共有と、特に数字は理由がなく上がったり下がったりしない、神風は吹かないという理解をしてもらう必要があると感じる。
🗞 ロイターのデジタルニュースレポート2023
ロイターのデジタルニュースレポート2023に関する記事である。(原本がまだちゃんと読めていないので、次回自分も読んだ感想など書きたいとは考え中)
The Fixのこの記事では、TikTokのニュース利用が増加、Facebookの利用が減少と書かれている。また、Instagramも引き続き存在感はありつつ、Twitterも社内の混乱はあるが存在感はある。
そして、着目したいのがニュースサイトなどのウェブサイトやアプリから見ている人の割合は、5年前の32%から現在は22%に減少しているということである。
これは、日本でも想像しやすい。
要は、ニュースはY!ニュースやSmartNewsなどからの閲覧が多いということだ。
また重い課題として、特に若者の間でニュースを避ける傾向は依然として高いとのこと。
PVなどが計測されているダッシュボードを見るだけでは見えてこない課題に、ニュースメディアは引き続き向き合う必要があると感じる。
🧠 今週のAI関連
今週から、メディア出版に関わるAI関連の記事だけ抜粋していく。
週刊少年ジャンプのChatGPT活用事例。先日リリースされた「Comic-Copilot(コミコパ)」についての話題である。
コミコパは、テーマやキャラクターのネーミングを考えてくれたりサポートをしてくれる。
あくまで担当者は、補助ツールであると話す。
ライブドアニュースがAI要約機能のβ版をリリース。
ライブドアニュースの過去10年分の要約データを事前に学習しており、ニュース記事を3つのポイントに要約した独自の見出しを生成できるとのこと。
最初はグループの媒体を中心に活用、おそらくlivedoorニュースに配信している他社のメディアへの拡大もしていくと読める。
EUが人工知能(AI)規制案を採択した。
規制案はAI製コンテンツの明示や、違法なコンテンツの作成を防ぐモデルの設計や生成AIに学習させた著作物の開示も義務付けとなる。
完全適用は2026年ごろになる見通しと少し時間がかかる。
GDPR(EU一般データ保護規則)同様に、EU地域所在ユーザに提供する場合に守る必要が出てくる模様。
# 🗾 国内注目ニュース
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日台メディア連合がナスダック上場を目指すワケ メディアジーンを率いる今田素子CEOに直撃(東洋経済オンライン)
前回も触れたメディアジーンの台湾メディア会社との統合、上場についてCEOの今田氏がインタビューに答える。記者が鋭い質問を仕掛けるが、丁寧に答えている。海外展開を積極的にやっていくと感じられる。 -
広告の未来はどこへ~日本の媒体別広告費の推移から考える~(ウェブ電通報)
2022年の日本の広告費は7兆1021億円で、2007年以来の最高額となる。インターネット広告費は全体の43.5%(2022年)を占める。新たに流通小売企業が広告媒体として存在感を増していくと考えらるとのこと。最近、コンビニでもデジタルサイネージをよく見る気がする。 -
メディア環境研究所「ポッドキャストユーザー意識調査2023」(株式会社博報堂DYメディアパートナーズ)
ポッドキャストの月1回以上視聴ユーザーは全体の19.5%、Z世代は33.0%。Z世代が感じる魅力1位が「ここでしか聴けない人や内容の話がある」とのこと。逆に言うとそれを出せないのであれば、無理してポッドキャストはやる必要はないということ。 -
国内外のポッドキャスト利用実態とメディア企業が音声に参入することの可能性【音声メディア最前線#02】(Media Innovation)
個人的にリスペクトしているオトナル八木氏の、現状の国内外ポッドキャストの状況記事。
メディア側も積極的にポッドキャストをやっていけば良いと感じるが、マネタイズが整ってない状況のため参入も少ないと感じる。 -
メディアの技術研究組合、新たに日経など7法人が参加(日本経済新聞)
インターネット上のニュース記事などに、発信者情報を紐づける記述で新たなに日経新聞などが入った。W3CなどWeb標準技術へ取り込みを模索するが、海外メディア企業が入らないと進まない気もする。日経が入ったことでFTが入るとまた風向きは変わるかもしれないが。 -
CCCと三井住友、Vポイントに統一 24年春サービス統合(日本経済新聞)
統合により、一気に会員規模がトップになるという話である。個人的には報じる媒体によって、Tポイントの会員規模の計算がバラバラだったりするので(1億とも7000万人とも)実態掴めない。年間利用者数が7,000万人とあり、名寄せも行ってるようであるがそんなに規模があるのかと感じる。
# 🌏 海外ニュース
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Twitter、広告収入をユーザーに還元へ(ASCII.jp)
ツイートに対する返信に表示される広告収益をユーザに還元する計画があるとイーロンマスクがツイートした。数週間以内に開始されるらしいが、質の悪い広告枠と思われるので還元したとしても僅かな金額にしかならないだろう。 -
Young people are abandoning news sites: New research reveals scale of challenge to media(What’s New in Publishing)
ロイター研究所デジタルニュースレポートによると、若者がニュースサイトから離れているとのこと。SNS経由からのニュース摂取にシフトしており、YouTubeやTIkTokの存在感が増している。記事最後には、メディアが読者との直接的なつながりを切り拓く必要があるとしめている。 -
ニューヨーク・タイムズが購読者数増加の成功の 3 つの鍵を共有 (INMA)
成功事例としてNYTの購読者増加のポイントを紹介している。その中で個人的に重要だと思ったのが組織体制だ。編集部に多くの責務を負わせるのではなく、エンゲージメント増加や読者獲得、技術投資とチームを分けて取り組んでいること。 -
Google News Showcase to launch in the US this summer(PressGazette)
Googleが地域メディアに金額補助などを出す取り組みニュースショーケースが米国で始まる。日本では地方紙や一部全国紙も入っている。 -
Instagram’s upcoming Twitter competitor shown in leaked screenshots(The Verge)
噂されているInstagramのTwitterライクなタイムラインが社内会議で披露されたとのこと。技術的な視点として、マストドンでも採用されているプロトコルが採用されており同じプロトコルであれば情報を接続できる模様。
Twitterユーザが移る先になるのか、興味深い動きである。 -
Operating loss clouds Kakao Entertainment's IPO plan(The Korea Times)
韓国のKakao Entertainmentは昨年は7年ぶりに営業損失を出し、IPOの計画に影を落としてるとのこと。傘下には、ピッコマを展開するカカオも持つ会社だ。営業損失の要因に、HYBEやJYPエンターテイメントなどの競合の存在があるとのこと。
# 📕 出版に関するニュース
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“閉店ラッシュ”の中で増加する書店の“特化型”。カリスマ店員と読書系YouTuberが語る書籍文化の未来(FNNプライムオンライン)
読書系YouTubeの方が語っている"私たちのYouTubeチャンネルを見てくださっている方の年齢層を見ると、10代はほとんどいないんです。私たち出演者より、年代が高い方が多いです"という言葉が重い。 -
【編集長雑記】「ar」編集長:令和の編集長は忙しいけど“楽しい”(ほんのひきだし)
女性向け雑誌の編集者がいましないといけないことが書かれている。コンテンツを届けることを考える大切さが感じ、プラットフォーマに依存した形で良いのかというのは感じる。 -
小学館、読者に響く上質な高単価品を販売 ECモール「LIFETUNES MALL」を強化(TECH+)
小学館が運営するECモールについて。質を売りにし、幅の広い商材がある。面白さを感じるが、会員数もそれなりにいるが、ユーザとのコミュニケーションについてメディアを通じてどう関係性を作るのか考えられているのか?EC単独で動いてないか?という点は気になった。 -
Link-U、2023年7月期の営業利益を2億5100万円から4億0600万円に上方修正…集英社系サービス統合効果、海外向けローカライズ受注も貢献(gamebiz)
# 編集後記
最近読んだ以下の記事がおもしろかったのでシェアします。
優れたUXだけでは市場を制することはできないという内容です。価格と流通(認知ルート)が重要という内容です。
主にSaasをターゲットした文章になっているのですが、メディアやニュースのサブスク製品の場合、この話が当てはまらない場合があるなと思いながら読んでいました。
Saasなどソフトウェアは、ユーザの何かしらの課題解決をします。例えば、予算管理をしたい、社員の勤怠管理をしたいなど。そうした場合、複数の製品を並べて比較し、価格や流通の中での評判というのはとても重要です。
例えば新聞のオンライン版のサブスクとした場合、ユーザにとって契約して得られる価値(得たい価値)はニュースを日々取得できることだとする。
その場合、大手新聞社に大きな記事の違いがないと考えると、判断基準として価格は大事だとなってくると思います。ただし、新聞の場合は過去どの新聞を撮っていたか、どの球団が好きかなどそれ以外の要素もそれなりに関わってくると考えます。
ただ、趣味の領域のサブスク製品の場合は、提供価値がサービスごとで違う場合もあるため、自社で競合と思っているサービスが本当に競合なのかは考えた方が良いとおも思います。
ただ、本記事自体は加入の話がメインのため、継続についてはまた別軸で消費者の継続解約の意思が決まるので、その点も考慮が必要だと思われる。
今週も読み終わった方は、押していただけるとうれしいです。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。
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