寄付で報道は成り立つか Publidia #125
このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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# ❌ スーパーアプリへ突き進む
旧TwitterことXがスーパーアプリに向かっていくと思われる。
オーナーであるイーロン・マスクが通話機能の搭載を予告し、フィンテックサービスへの展開の野望も伝えられる。
スーパーアプリは、もう数年前から注目を浴びているサービスである。国内外で、以下のようなサービスがある。
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LINE
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WeChat
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Alipay
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Gojek
スーパーアプリとは、様々なサービスや機能を統合したモバイルアプリのことである。
1つのアプリに集約されていることで、ユーザーは複数の個別アプリをダウンロードして管理する手間を省くことができる。
多くは決済機能やコミュニケーション機能を持つサービスとなっている。
欧米では、MetaやMicrosoftやUber、PayPalなどがスーパーアプリを目指しているが、まだ決定打は出ていない。
X(というよりマスク氏)は盲信してスーパーアプリに突き進む可能性が高い。そうした目論見もあるのか、プライバシーポリシーの改訂行う予定である。
スーパーアプリ化に向かうとなると、Xは無料で情報を拡散できるツールからは離脱していくと思われる。
メディア、パブリッシャーはそうした変更に向けてユーザと直接つながる方法や、他のSNSでのコミュニケーションを考える時期にきていると考える。
# 🏦 寄付で報道は成り立つか
週刊文春が「寄付プラン」という形で、金額を指定してクレジットカードなどで送金する機能をリリースしている。
その結果、3週間で270万1006円が集まったことを発表している。
この寄付プランを立ち上げた目論見として、海外ではそうした寄付を受け付けてるメディアもあり日本で先立ってやってみたいということで立ち上げたとのこと。以前から、取材費を寄付したいという声もあったようだ。
金額の報告でも書いているが、取材で移動を伴う場合に最低でも10万円は飛ぶことを考えると、現状集まってる金額は足しにはなるが、十分とはいえない。
情報の出し先がネットにシフトしていく中で、書店や駅の売店などで雑誌を買うことで応援することが難しくなる中、こうしたチャレンジは良いと感じる。
しかし、全てのメディアが同じことをできるかと考えると厳しいと感じる。文春のクオリティだからこそできると思われる。
もし、他にできるメディアがあるとしたら、ニッチなメディアなどであろう。
# 🧠 AI関連ニュース
報道メディア26団体が世界AI原則(Global Principles on Artificial Intelligence)を発表した。日本新聞協会も26団体の1つである。
世界AI原則では、オリジナルコンテンツを保護することや透明性の維持、品質と完全性の確保、不公平な競争などを生み出さない、などが書かれている。
以下に、公式の情報がありまとまっている。
米国のGizmodoのオーナーであるG/O Mediaがスペイン版のGizmodoの編集部を閉鎖し、現在AIを使って記事を翻訳配信しているとThe Vergeが伝えている。
G/O Mediaは7月にGizmodoへAIで書かれた記事の投稿を始め、事実の誤りがあるものが含まれていると指摘されている。
米ウェブ評価サービス「NewsGuard」が、Chat GPTなどの生成AIでコンテンツを量産するコンテンツファームの、最新の実態をまとめている。
大手ニュースメディアのニュース記事を自動収集し、生成AIを使って、検索エンジンで上位に表示されるように内容を書き換えさせた上で、無断掲載を行なっているコンテンツファームが存在するなど伝えている。
# 🗾 国内ニュース
注目ニュース
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広告関連事業を手掛けるCARTA HOLDINGSが希望退職社募集を行うことを発表した。満45歳以上の社員など70名程度を募るとのこと。
当日に決算発表を行い、営業利益など予想より大幅に未達となったことがわかった。2022年後半から広告市況の冷え込みが続き、予想以上の冷え込みが原因とのこと。
広告代理店の決算発表でこれから、広告市況の状況が見えてくると思われる(官報ブログ)
その他のニュース
# 🌏 海外ニュース
注目ニュース
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Metaは欧州においてInstagramとFacebookの有料版を検討していると、ニューヨークタイムズが伝えている。有料版を利用することで、広告が掲載されないようになるとのこと。
この有料版は、EUの規制当局の動きをかわすためのものらしいが、まだいつ実施されるかも不明とのこと(The New York Times) -
Googleが検索結果を生成AIによって答えを返すLab機能 Search Generative Experience(SGE)によって、トラフィックに与える影響について書かれている。記事では、独自の分析からトラフィックが44-75%が失われる可能性があると書かれている。ただし、著者がSEOのコンサルタントの人物がゲストライターとして投稿しているため、その点も加味して受け取る必要性もある。
ただし、トラフィックが減ることでGoogleの広告ビジネスにも影響がある。そのためそこまで影響が出ないように調整はすると個人的には予測する(Search Engine Land) -
TIkTokがメッセージングアプリになっていく、そう感じる求人を掲載しているとAxiosが報じている。TikTok Socialというチームの求人とのこと。
TikTokはショッピングやポッドキャスト機能も展開しようとしており、X同様にスーパーアプリになっていくようであ(The Verge)
その他のニュース
# 📕 出版に関するニュース
注目ニュース
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集英社の決算発表が文化通信で詳細が出ていたので紹介する。増収減益となった。詳細は文化通信デジタルの記事をみていただきたい。
ONE PIECEや呪術廻戦、SPY FAMILY、そして映画SLAM DUNKなどが寄与しているようだが、コミックス(紙のみ)が前期比で落ちてるところはきになる(文化通信デジタル) -
海外の出版社が厳しい状況でコストカットに努めているとPublisher Weeklyが伝えている。ハーパーコリンズやペンギンランダムハウスは製造、輸送、流通コストに苦しみ人員整理なども行った。
サイモンアンドシュスター社は大手では唯一、踏みとどまった会社である(Publisher Weekly) -
電子書籍取次メディアドゥの2023年8月次の速報値が発表されている。
前年同月比になるが、コミックが104.4%となっている。発売作品によって変動があるが、成長率が少しずつ落ちている気もしなくもない(メディアドゥ)
その他のニュース
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今の漫画編集者は“編集権を放棄”している!? 鳥嶋和彦氏×霜月たかなか×筆谷芳行『同人誌 vs 商業誌』白熱のトークバトルから見えてきた漫画業界の過去・現在・未来(電ファミニコゲーマー)
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Amazon Kindle for Mac is being discontinued in October 2023(Good e-Reader)
# 編集後記
広告会社の決算が厳しい状況のようで、マネタイズに関しては広告依存から脱却が必要になってくると感じます。ただ、単純にサブスクなのかというのは疑問に思っています。
先日、雑誌メディアがサブスクサービスを開始していましたが、ずいぶん強気な価格設定なのを見かけました。
そもそも、サブスクする価値をユーザは感じるのか。
太るのは、そのサブスクシステムを売ってる会社だけなのでは、とたまに感じます。
公開をミスってなければ、メディアやエンタメ業界のことを話すポッドキャスト「メディアのげんざい」のシーズン2の初回が公開されています。
初回は、AIでヒットする作品を見つけるInkittの日本進出について話をしています。
老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。
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