ニュースプラットフォームが出す許諾料は安いのか? Publidia #128

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ayohata 2023.10.01
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# 📰 ニュースプラットフォームが出す許諾料は安いのか?

先週も紹介した、公正取引委員会が出した「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書について」について触れたい。

ただ、もう時間もた、ちある程度報道各社も報じていろんな意見も出ている。
軽く触れたいと思う。

まず、新聞など各社の記事をあらためて紹介したい。

朝日新聞

日経新聞

読売新聞

東京新聞

個人的に気になったのは、記事の対価である許諾料の支払いが安い、と読み方によっては受け取られる記述を行っている報道機関もあるということだ。東京新聞、朝日新聞。朝日新聞については、公正取引委員会の委員長へのインタビューで”記事の使用料が著しく低い状態が続いた場合はどうしますか”という質問を行っている。

あくまで、報告書では多くの媒体が許諾料は安いと感じている、算出基準が不明瞭と感じている、他社より低い単価で設定されている媒体も存在する(格差が存在する)ということは書かれているが、総じて安いと表現している部分はなかった気がしている。

今後の話である。

主にYahoo!ニュースとメディアの相互理解が必要になってくると思うが、仮に許諾料をあげることになると、よりプラットフォームが優越的な地位になるのではとも感じる。その許諾料への依存度が高まるからである。
ただ、シナリオ的には算出基準のより明確化しか手打ちはできないのでは、とも感じる。

 # 🧠 AI関連ニュース

8月にThe HEADLINEから発表された盗用を疑われる記事を出してしまった件の続報である。
今後の開発は行わないとある。
ニュースサイトの情報を取得した範囲が、タイトル、媒体名、本文の一部とあり、著作権法に従っての対応を目指していたようだ。
結果的に、残念な結果になったがOpenAIのbotを拒否する流れもきてることから、報道分野においてのAI活用はどう進んでいくのか、気になるところである。

弁護士の柿沼太一氏が、生成AIと著作権法について解説をしている。
新聞協会らが出した著作権法の解釈の声明についても言及を行っており、”、AIの開発において著作物を利用することに対して著作権侵害を主張することは、かなり難しいと言わざるを得ません”と語っている。

MicrosoftのMSNニュースで、亡くなった元NBA選手を「無用」と非難する見出しで、AIが生成したと思われる記事を公開した。この記事は、選手の死に関する記事を不正確に再構築したものであると指摘されている。

ゲーム・オブ・スローンズの原作者「ジョージ・R・R・マーティン」など10人以上の作家がOpenAIを提訴した。OpenAIのChatGPTが著作物を無許可で学習に使用したと主張している。
全米作家協会は「大規模な組織的盗用」でOpenAIを訴え、言語モデルのトレーニングに著作物を使用する際の許諾と補償を求めている。 

米報道機関はAIの活用に苦慮している。多くは信頼度不足から慎重だが、人手不足の企業はニュース編集にAIを導入している。
AP通信やガネットの事例を紹介しているが、生成AIの品質問題や著作権の懸念が続出している。

Kieiと幻冬舎は、ChatGPTを用いた業務自動化AIシステムの開発プロジェクトを開始すると発表した。出版業界のDX化と業務効率化を目指すとのこと。
Kieiは出版・執筆プロセスの効率化を進めるとのこと。

富士山マガジンサービス主催の「出版ハックデイ」で、生成型AIを活用したアイデアを競うイベントが開催された。
テーマは「プロンプトエンジニアリングでの編集支援」と「出版データでの新サービス」。優勝はデータ分析プラットフォーム「Collectro」を開発するHogetic Labであった。Collectroは、データ分析のコストを最大70%削減するプラットフォームとのこと。

Amazonの「Kindle ダイレクト パブリッシング(KDP)」は、1日に出版できる本の上限を3冊に制限することになった。
これは生成AIを用いた出版が増加し、新刊を埋め尽くす事態を防ぐための措置である。

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 # 🗾 国内ニュース

注目ニュース

  • NewsPicksのオリジナル記事で、YouTuberはもう、稼げないのか、という記事を出している。ショート動画の台頭もありつつ、YouTubeの広告収益の厳しい状況も伝えている。(NewsPicks)

  • デジタル音声広告分野を手掛けるオトナルは、博報堂DYメディアパートナーズと資本業務提携を締結した。米国のデジタル音声広告市場は約8,700億円(2022年)の市場規模を持っており、日本でも市場の立ち上がりが期待されている(オトナル)
    また、そのオトナルは音声配信プラットフォーム「stand.fm」の運用型音声広告の販売も開始している(オトナル)
    音声広告の立ち上がりがまだまだと言われているが、来年こそ期待したいところである。

  • MEDIA MARKETS MEETで、日経BPの中の人に行ったメールインタビューの一部を掲載している。
    AIを同僚やパートナーとして見るメディア企業とそうでない企業との間に分裂が生じると述べていたとのこと。成功するメディア企業はAIを脅威ではなく、協力者として捉えるものとなり、人間の創造性がより価値あるものとなると強調している。AIの導入により、一部の役割は自動化されるが、人間の創造性が重要となるとの見解を示している(MEDIA MARTKETS MEET)

その他のニュース

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# 🌏 海外ニュース

注目ニュース

  • CNBCが、DisneyがABCやその他のメディア資産の売却を検討していると伝えている。その売却は収益よりも「古いメディア」としてのDisneyのイメージからの脱却を意味しているとのこと。売却により、古いメディアの時代が終わり、Disneyが新しい章を迎える準備ができていることを投資家に伝えるメッセージとなるとのこと。
    CNBCは、この動きはメディア業界全体の将来に影響を与え、他の大手メディア企業も伝統的な資産の売却を検討するきっかけとなる可能性があると書いている(CNBC)

  • Financial Timesによって出されたアプリFT Editが10万ダウンロードを突破し、そこで得た8つの教訓が紹介されている。チーム全体でサービスの価値を理解することなどプロダクト開発やマーケットにフィットするための考え方などが書かれている(The Audiencers)

  • アメリカの米連邦取引委員会(FTC)がアマゾンを反トラスト法で提訴した。
    FTCを率いるリナ・カーン委員長は、研究者時代からアマゾンを目の敵にしてきたということで、若干無理筋があるのではと言われている提訴ではある。
    提訴の内容として、出品者がアマゾン以外のサイトで安く商品を販売している場合、アマゾン上で検索に出にくくするなどの操作をし、不利益を与えていたというものだ(日経新聞)

その他のニュース

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# 📕 出版に関するニュース

注目ニュース

  • 集英社は、マンガの好きなシーンをXに投稿できる「切り抜きジャンプ+」を公開した。これにより、ブラウザ版「ジャンプ+」の一部作品を正規のスクショでXにシェアできる。対象となる作品は「推しの子」や「怪獣8号」など。
    一番、強いジャンプがこうした先進的な取り組みを行うということが続く、マンガに関してのトップランナーであるのはもう疑う余地がない(J-CASTニュース)

その他のニュース

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# 編集後記

あと二ヶ月で今年が終わる?

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。

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