2024年のメディア業界 Publidia #141

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ayohata 2023.12.24
誰でも

このニュースレターPublidiaは、10年近くウェブメディアや書籍系ウェブサービスに関わっているアヨハタが国内外の「出版」「メディア」に関する動向について紹介しています。
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今週もよろしくお願いします。
今年最後のPublidiaとなります。

12月27日の、HON.jpにて毎年行われている年末特番に出ます。
マンガ業界Newsまとめの菊池さんと出版業界ニュースまとめの古幡さんと2023年の出版ニュースを振り返るという内容になっています。西田宗千佳さんと、HON.jpの鷹野凌さんとで5人で振り返る内容になっています。
私はメディアまわりについて話すことになります。前半は無料、後半は有料となっています。有料のパートはあまり縛り気にせず話をしようと思います。

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お知らせ
本ニュースレターでは取材や執筆継続のために、サポートメンバーを募集しています。

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# 2024年のメディア業界はどうなっているのか?

2023年最後のPublidiaはゆるく2024年の予測をしたいと思う。

まず今年大きかった出来事として、以下を思い出します。

  • 生成AIの流行

  • X(旧 Twitter)の混乱とSNSの分散化の匂わせ(あくまで匂わせ)

  • 国内外のメディアの苦戦と再編(ViceMediaの破綻やNewsPicksの上場廃止)

  • プラットフォーマーへの風当たりが強まる

そうした出来事を経て、2024年日本のメディアは何がおきるのか。ゆるく考えてみた。

サブスクの撤退がはじまる

2023年、明るいニュースとしてニューヨークタイムズが有料会員数が電子紙含めて1000万人を突破というものがあった。しかし、勝者がいれば敗者も存在する。

サブスクについては、新しいマネタイズへの期待という側面でもある。その流れでサブスクのシステムを導入するという動きが先行していたと感じる。しかし、導入後満足に伸びてない会社もあると聞いている。
別コンテンツとのバンドルにより、新規加入促進など投資余力がある会社は良いが、そうでない会社も出てくる可能性もあり、サブスク自体を撤退するメディアもあるかもしれない。

トラフィックの多様化と活かしきれないデータ

一部のメディアは、Y!ニュースなどのプラットフォームに依存をしているが、日本でもテストが始まっているPC向けのGoogle Discoverなどが本格的にはじまり、多様なトラフィックの集め方に興味がうつる。そして、Xからの流入も減少により、Threadsがトラフィックを集めやすいSNSになっていくか。

ただ、トラフィックという定量的なデータにばかり注目しているところは既存の広告の売り方やアライアンスビジネスから転換できず、新しいビジネス(例えばコミュニティビジネスやEC)を育てることはできず、ハルメクのような定性的なデータと向き合い始めるメディアは徐々に広告などの依存度を下げてメディアをブランド化し始めるところも出てくる可能性もあると信じている。

サードパーティーCookieの影響は緩やかに茹でガエルへ

2024年に起きるサードパーティーCookie廃止であるが、2024年1月からChromeでは1%のユーザが先行して無効になるという発表もあり、緩やかに広がっていくと思われる。

広告単価の数字を見ている担当者は緩やかに落ちていく流れを、どうすることもできず、年末にはそれなりにインパクトがある数字になっていると思われる。

前年比などでみているとはっきりとするだろうが、広告担当の人間などとの会話では、もうどうすることもできない、という話である。
つまり、広告担当に広告単価を上げてくれという願いはもう今時点で無理筋なお願いだということだ。

緩やかに落ちた数字により、広告収入を改めてみたときに厳しい状況になっているであろう。

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予測したもの全てが暗い出来事のようにも見えるが、早く考え行動し始めたら手を打つことができるものばかりだと考える。
サブスクを始めて芳しくないが、数字だけ見るわけでなく現時点のユーザの満足度をN1分析で調べていくことや、広告以外の収益源獲得のチャレンジを試験的に始めていく。

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 # 🗾 国内ニュース

注目ニュース

  • デイリーポータルZが東急メディア・コミュニケーションズから独立し、編集長の林氏が代表を務める会社に譲渡される。現状では月100万円ほどの赤字が続く運営となり、ファンからの支援を求める形や他のマネタイズ方法も模索するようだ(ITmedia NEWS)
    デイリーポータルZは老舗のWebメディアである。
    個人的な感想だが、現状月100万円の赤字になるという点は運営方法に問題があるのではとも感じる。2022年の媒体資料で月間1,000万PVとなっている。広告をあまり貼りたくないという想いがあり、ただ仮にそのPVで広告を貼っても焼け石に水だとも感じる。
    同じように、おもしろいサイトとしても有名なオモコロはPR記事もおもしろいコンテンツとして作り上げ、事業としてもうまく行っているように見える。
    この違いは何だったのか、考えさせられるニュースだ。

その他のニュース

  • Chromeで来年1月からサードパーティCookie制限のテストはじまる、段階的に拡大(ケータイ Watch)

  • スマートニュース、『SmartNews Awards 2023』の受賞メディアを発表。大賞は「集英社オンライン」に(スマートニュース株式会社)

  • メディアコンテンツが生活者に与える心理的影響を指標化 「メディアコンテンツ エンゲージメントスコア」を開発(電通ウェブサイト)

  • ソニー系、「アニマックス」など売却 ノジマ子会社に(日本経済新聞)

  • カンヌライオンズ2023受賞から考える、ポッドキャストの可能性(広告朝日)

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# 🌏 海外ニュース

注目ニュース

  • Warner Bros. DiscoveryとParamountが合併するために会合を行なっている。合併により、NetflixやDisney+と対抗していくとのこと(Axios)

  • Threadsが、7月のローンチから5ヶ月後に、ついにEUのユーザーにも利用可能となった。プロフィールなしで使用モードが提供され、ユーザーはInstagramを通じてログインする必要がなく、投稿を閲覧できるが、返信や「いいね」、リポストはできない。
    現時点のThreadsの月間アクティブユーザーが1億人未満であり、EUでの利用開始によりこの数を超えることが期待されている(TechCrunch)

  • 元DIGIDAY編集長Brian Morrisseyによる、2024年のメディア業界の予測記事では、プラットフォームと出版社での契約が進むことや、マスメディアの衰退、ポッドキャストやニュースレターの個人メディアの台頭について予測している(The Rebooting) 

  • Bridged MediaのCEO、Maanas MedirattaによるとAIは実際にはほとんどのデジタルツールに組み込まれており、AI戦略は単純なビジネス目標を達成するためのツールとして捉えるべきであると語っている(MediaMakersMeet)

その他のニュース

  • Googleはオンラインニュース法に従いカナダのパブリッシャーに年間1億ドルを支払い、米国でも類似の法律が成立する可能性(MediaPost)

  • Netflix、ほぼ全作品の視聴時間を公開へ ストで方針転換(日本経済新聞)

  • サードパーティCookie 廃止が迫るなか、パブリッシャー各社が抱える具体的な悩みとは?(DIGIDAY[日本版])

  • Media Briefing[日本版]: 2024年、メディアの マネタイズ における力点はどこになるのか?(DIGIDAY[日本版])

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# 📕 出版に関するニュース

注目ニュース

  • 赤字、リストラ、コンビニ撤退「本の物流王」の岐路 業界を騒がせた取次大手「日販」の幹部に聞く | メディア業界 | 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/720473
    書店のドン「紀伊國屋」がTSUTAYAと組んだ裏側 紀伊國屋会長に合弁会社設立の狙いを直撃 | メディア業界 | 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/721710

その他のニュース

  • 紀伊国屋書店、英語人材100人養成 米国で雑貨仕入れ(日本経済新聞)

  • 書店在庫・図書館検索との連携など目指す JPIC・版元ドットコムなど共同で「書店在庫情報プロジェクト」始動(文化通信デジタル)

  • マンガ大国日本の逆襲 世界同時配信、SNSで話題に(日本経済新聞)

  • トップ「週刊ヤングジャンプ」27.2万部…男性向けコミック誌部数動向(2023年7~9月)(不破雷蔵)

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# 編集後記

Publidiaを今年も継続して読んでいただきありがとうございました。

うっすらと、年明けから忙しくなることが確定しているのですが、このPublidiaの配信時間をちゃんと固定化したいという目標があります。
いつも土日のどちらか、最近は日曜が多いので、土曜日の朝にちゃんと配信できるようにしたい。来年の目標です。

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老舗の出版社講談社のグループ会社であるKODANSHAtech LLCにてディレクターとして働いています。複業として、ウェブメディアのマネタイズ支援やデータ分析なども行っています。以前は読書管理サービス ブクログの事業責任者、メディアドゥでマンガサービスとブロックチェーンプロダクトに関わっていました。

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