日本と米国、メディア企業の「不動産収入」依存度の違い Publidia #206

今回は、日本と米国、メディア企業の「不動産収入」依存度の違い、Google、サードパーティCookie廃止を事実上撤回 業界に波紋広がりについて書いています。
ayohata 2025.04.28
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 # 📍 ピックアップ

今回は以下の内容をピックアップして紹介しています。

  • 日本と米国、メディア企業の「不動産収入」依存度の違い

  • Google、サードパーティCookie廃止を事実上撤回 業界に波紋広がる

日本と米国、メディア企業の「不動産収入」依存度の違い

毎日新聞GHDが、東京・竹橋にある本社ビル「パレスサイドビル」の再開発・売却検討を開始したと報じられた。
竣工から60年近くが経過した昭和建築の名作だが、毎日新聞GHDは経営悪化により、1500億〜2000億円規模での再開発プランを大手デベロッパー6社に打診。ビル活用の最大化を目指している。
毎日新聞GHDは2024年3月期には売上高約1267億円に対し、営業赤字12億円、最終赤字15億円を計上しており、不動産資産の活用が生き残り策となっている。

一方、米アクティビストのダルトン・インベストメンツは、フジ・メディアHDに対して、社外取締役の総入れ替えを提案するとともに「不動産事業の切り離し」を求めた。
ダルトンは不動産収益に甘え、本業の放送・メディア事業改革が遅れた結果、肝心のメディア競争力を失ったと指摘する。
同様の批判は日本の新聞社以外にもメディア企業に向けられている。

果たして、不動産収入に頼ることは悪いことなのであろうか。

例えば、日米の大手メディア企業を比較すると、「不動産収入」の存在感に大きな違いがある。
日本では新聞社やテレビ局を中心に不動産収入が本業を支える重要な収益源となっているが、米国では逆に不動産収入の割合は極めて低いのが実情だ。

日本では、たとえば朝日新聞社が売上の約15%、フジ・メディア・ホールディングスが約22%を不動産・観光事業から得ている。TBSホールディングスも約4%程度だが、不動産部門の利益率は高く、全社利益の6〜7割を稼ぐ年もある。
朝日新聞の場合、不動産収入は400億円規模に達しており、本業の新聞事業の赤字を実質的にカバーする存在と言われている。

一方、米国ではニューヨーク・タイムズ社が自社ビル賃貸収入を得ているものの、売上に占める割合はわずか1%程度。他の新聞社や放送局も自社資産を売却・リースバックする動きが主流で、ウォール・ストリート・ジャーナルを抱えるダウ・ジョーンズ社やCBSなどは、現在ほぼ不動産収入を持たない。
収益の中心は購読料や広告、コンテンツ販売に完全にシフトしている。

日本で不動産収入の割合が高い企業の特徴は、都市部に大型ビルを保有している点だ。
朝日新聞の「中之島フェスティバルタワー」、フジ・メディアHDの「赤坂サカス」や「サンケイビル」など、好立地で賃料単価も高い不動産を持つ企業ほど、本業低迷下でも安定収益を確保できる。一方、規模が小さい出版社や地方メディアは不動産収入の寄与が限定的で、事業環境に左右されやすい。

しかし、本業以外に不動産収入があること自体は、決して「悪」ではないと考える。
メディア業界は広告市場縮小やデジタル化の波に直面しており、安定収益源としての不動産活用は経営リスクを下げる有効な手段だ。

しかし、前職が「パレスサイドビル」で働いていたので個人的に感じることがある。
老朽化もさることながらアクセスも悪いので、どこまで再開発で経済効果がでるかは疑問である。

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 # 🗾 国内ニュース

  • サイバーエージェントの広告運用、AIが社員代替 2分でリポート 来年にも完全自律化へ(日本経済新聞)

  • 「スクショ」が商標登録されてしまっている件の弊害と対応について(栗原潔  エキスパート - Yahoo!ニュース)

  • メディアドゥ(3678)の財務情報ならログミーFinance 【QAあり】メディアドゥ、3期ぶり増収増益で再成長へ 5ヶ年の中期経営計画も同時発表(ログミーファイナンス)

  • グーグル広告が「ジャーナリズム維持のための収入奪った」、独禁法違反判決を米報道機関は歓迎(読売新聞)

  • 広告表示テスト開始から約3ヵ月…「Threads」で“先行優位”を得るために今始めるべきこと(MarkeZine)

  • 朝ポキ、累計1億ダウンロードを突破 4年半で急成長(株式会社朝日新聞社)

  • AIは記者を「殺す」のか「育てる」のか?「AI記者」が投げかける問い(あしたメディア研究会 NEWS)

  • バンダイが絵本投稿、読み聞かせサイト開設 未就学児向けの新規IP創出狙う(産経ニュース)

  • note、ココナラの筆頭株主に 南章行氏から7億円で株式取得(CNET Japan)

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# 🌏 海外ニュース

  • コンテンツの発見方法は変化しています — メディアは次の時代をリードする準備はできているでしょうか?(INMA)

  • Googleが独占企業と認定された背景と、広告技術業界への影響(MediaPost)

  • Netflix 3か月間決算 増収増益 広告収入の好調などで(NHK)

  • Netflix、広告プラン開始約2年 部門トップが語る注視率という強み(日経クロストレンド)

  • AIは出版社が出版物の読者層を収益化したり、業務プロセスを効率化したりするのを支援します(INMA)

  • Google に反トラスト違反の有罪判決 アドサーバー分離は「パンドラの箱」か(DIGIDAY[日本版])

  • 2024年のデジタル広告収入は前年比15%増加しました(IAB)

  • データによると、アルゴリズムの変更後、Facebookがソーシャルトラフィックの構成比で増加していることが示されています(Press Gazette)

  • Google検索部門責任者:AIサマリーがクリックの質を向上させる(SearchEngineLand)

  • Googleの解体だけではアドテック・エコシステムの問題は解決しない(ADWEEK)

  • Google が「クリエイティブ」に本格参入。鍵を握るのは生成AI(DIGIDAY[日本版])

  • 「 TikTok 禁止」が再び延期。アリッサ・マッケイ氏が語る、いまクリエイターが思うこと(DIGIDAY[日本版])

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# 📕 出版関連ニュース

  • テレビ局や出版社のアニメ・マンガ事業への取り組みの急拡大ぶりに改めて驚いた(篠田博之  エキスパート - Yahoo!ニュース)

  • 文化通信社セミナー 文化通信社・星野渉「2024年度出版業界の動向と今後の展望」(The Bunka News デジタル)

  • 京王電鉄 紀伊國屋書店に京王書籍販売(啓文堂書店)の全株式譲渡(The Bunka News デジタル)

  • 日経BP、書店との直接取引を開始 ブックセラーズと契約(日経BP)

  • 【トップインタビュー】みんとしょ発起人・土肥潤也氏に聞く シェア型図書館「みんとしょ」の試み 全国に100館、本棚オーナー6000人に(The Bunka News デジタル)

  • BookTok, romantasy and follower counts: are future bestselling authors all going to be TikTok stars?(THE BOOKSELLER)

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 # 📌 ピックアップ

Google、サードパーティCookie廃止を事実上撤回 業界に波紋広がる

Googleは4月22日、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookie廃止の方針を事実上撤回し、現行のユーザー選択方式を継続することを発表した。
プライバシーサンドボックス担当バイスプレジデントのアンソニー・チャベス氏は、公式ブログで「新たな単独プロンプトを導入せず、引き続き設定画面から個別選択を可能とする」と述べた。

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  • # 編集後記

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