MIT Technology Reviewが示す“ニュースレター・ファースト”戦略 Publidia #204
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G/O Media、Quartzを手放す理由
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MIT Technology Reviewが示す“ニュースレター・ファースト”戦略
G/O Media、Quartzを手放す理由
2025年3月、米G/O Mediaはビジネスメディア「Quartz」と、コマース特化の「The Inventory」をカナダのRedbrickに売却した。
G/O MediaにとってQuartzの売却は単なるブランド整理ではなく、同社の変化する戦略と、近年浮上していたAI活用に伴う混乱の“後始末”とも言える一手だった。
Quartzは2012年、米Atlantic Mediaにより創設され、「スマートでグローバルな読者層」をターゲットに急成長した。2018年にはNewsPicksを運営するuzabaseが買収したが、2020年にQuartz共同創業者らが買い戻し、独立運営に回帰。その後、2022年にG/O Mediaの傘下に入った。
しかし、G/O Mediaの運営下でQuartzは急速に変質していく。
Futurismによると、背景にあるのがAIによる記事生成への依存である。G/O Mediaはコスト削減とスケーラブルな運営を目的に、Quartzを含む複数のメディアブランドでAI生成記事を導入。だが、その多くが品質面で問題を抱え、事実誤認や信頼性の低さが露呈した。
結果、編集者やライターの大量解雇を招き、Quartzの編集部はほぼ空洞化した。AI主導の“スロップ”(粗雑な記事)は読者の信頼を損ない、ブランド価値を大きく毀損した。
こうした混乱を受け、G/O Mediaは2023年以降、The OnionやGizmodoなどのブランドも相次いで売却した。
残されたのはKotakuとThe Rootのみとなり、同社は「収益効率の高いブランド」に特化する方向へシフトしている。Quartzの売却も、そうした整理の一環であり、AI導入によって効果が見込めなかったブランドの切り離しを意味している。
一方で、買収先のRedbrickは、メール広告配信プラットフォーム「Paved」を中心に、ニュースレター分野に強みを持つ企業である。今回の買収によって、Quartzの編集資産を活用しつつ、ニュースレター読者の収益化と広告事業の拡大を図る構えだ。
Pavedとの統合により、Quartzは編集体制こそ縮小したものの、ニュースレターを軸としたメディアブランドとして再構築される可能性がある。
今回の一連の動きは、メディア業界における「AI活用の限界」と「収益構造の再設計」の両側面を浮き彫りにした。
G/O MediaはAIによる効率化を追求したが、その代償としてコンテンツ品質と信頼性を失い、メディアの根幹に揺らぎが生じた。Quartzの売却はその帰結のひとつであり、AI活用と編集のバランスを問う象徴的なケースとなった。
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# 📌 ピックアップ
MIT Technology Reviewが示す“ニュースレター・ファースト”戦略
米国のMIT Technology Reviewは、ニュースレターを有料購読者獲得の中核に据え、コンテンツ主導の戦略で成果を上げている。単なる情報配信の手段にとどまらず、ニュースレターは読者との信頼関係を築く重要な接点と位置づけられている。